医学会誌43-補遺号
38/102
28基-50: 下肢静脈瘤血管内レーザー治療後の静脈機能に関する検討研究代表者:田淵 篤(心臓血管外科学)【目的】下肢静脈瘤血管内レーザー治療後の静脈機能の改善を客観的に評価し、本治療法の有用性を検討する。【対象・方法】平成28年1月から12月までの1年間に当科で下肢静脈瘤血管内レーザー治療を行った135症例、治療血管193例を対象とした。空気容積脈波検査を術前、術後1、6、12カ月で施行し、Venous Filling Index (VFI:立位時の下腿静脈充満速度)、Venous Volume (VV:立位時の下腿静脈貯留容量)、Residual Volume Fraction (RVF:間接的静脈圧)を計測し、術前後の静脈機能の改善を客観的に評価した。【結果】VFI(ml/sec.)は術前:7.2±7.0、1カ月:2.7±2.1、6カ月:2.4±1.7、12カ月:2.3±1.7。VV(ml) は術前:160.0±65.0、1カ月:126.8±53.7、6カ月:116.7±52.0、12カ月:117.8±57.7。RVF(%)は術前:54.2±16.3、1カ月:42.0±16.2、6カ月:36.9±15.1、12カ月:37.3±14.1であった。いずれのパラメータも術前値と比較して術後に有意に低値となった(p<0.001)。【結語】下肢静脈瘤血管内レーザー治療後1カ月で静脈機能は有意に改善し、12カ月まで維持されており、有用な治療法であることが示された。28挑-3:胸部外科手術予定患者に対する硬膜外麻酔および胸部ブロックによる鎮痛効果の検討研究代表者:山本 雅子(麻酔集中治療医学1)【目的】胸部外科手術に対して一般的に硬膜外麻酔や末梢神経ブロックによる鎮痛が行われる。しかし近年抗凝固療法中の患者は非常に多く、出血リスクがあると考えられる硬膜外麻酔は慎重な選択が必要である。Serratus-intercostal plane block(SIPB)は、体表の末梢神経ブロックであり、重篤な出血や血腫による合併症のリスクは低く比較的安全に施行できる手技である。今回SIPB+フェンタニル持続静注が硬膜外鎮痛法と比較してどの程度の周術期鎮痛効果が得られているか後ろ向きに観察、比較した。【方法】当院で2016年10月からVATS肺切除術を受けた患者で、術前抗凝固療法等により硬膜外穿刺の適応外と判断した患者に、SIPBとフェンタニル持続静注によるiv-PCAによる鎮痛を行い(SIPB群)と硬膜外麻酔を受けた患者(epi群)を以下の評価項目で後ろ向きに比較した。【評価項目】術後1時間と朝昼夕のVisual Analog Scale(VAS)、合併症、他の鎮痛薬の使用、酸素投与期間、入院日数より得られた結果はJMP10を用いstudent-t検定を行った。【成績】手術術式、手術時間、術中麻薬使用量は両群で差を認めなかった。(p>0.05)術後VASも術後4日目まで両群で差を認めなかった。(術直後:SIPB群6.0; 95%CI 2.8-9.2 vs epi群 4.2; 95%CI 1.0-7.4、p=0.3899、術後2日目:SIPB群 1.2; 95%CI 0.2-2.2 vs epi群 0.7: 95%CI 0.3-1.7、p=0.7288) 両群とも周術期の合併症は認めなかった。【結論】SIPBは、VATS肺切除術を受けた患者に対し、フェンタニル持続静注を併用することで、硬膜外麻酔と同等な術後鎮痛効果を示した。胸部外科手術の術後痛管理を良好に行うことができ有用な方法である。S34川 崎 医 学 会 誌
元のページ
../index.html#38