医学会誌43-補遺号
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28基-56:ラット精索静脈瘤モデルにおける水素水の造精機能に及ぼす影響研究代表者:森中 啓文(泌尿器科学)【目的】水素は酸化ストレスで生じた毒性の高いフリーラジカルを選択的に還元し細胞死を抑制する抗酸化剤として機能すると言われている。男性不妊症患者の30%に認める精索静脈瘤は酸化ストレスにより造精機能が低下すると言われている。ラットの精索静脈瘤モデルに対して水素水を投与することで酸化ストレスの改善と造精機能へ及ぼす影響について検討を行った。【対象と方法】8週齢、雄性、Sprague-Dawleyラットを用いて精索静脈瘤モデルを作成した。精索静脈瘤モデル群(n=8)とsham群(n=8)をそれぞれ水素水投与群と非投与群とに分け、術後12週目に検討を行った。精巣上体尾部から精子を回収し、精子運動解析装置(DITECT®)を用いて精子所見を検討した。また、精巣内における免疫組織学的、生化学的変化を検討した。【結果】精子所見は精索静脈瘤モデルの水素非投与群で運動精子濃度と運動率の低下を認めた(vs水素投与群、P<0.04)。ELISA法では精索静脈瘤モデル群、sham群ともに水素水投与群で8OHdGの低下を認めた(P<0.04)。TUNEL染色においては精索静脈瘤モデルの水素非投与群でTUNEL陽性細胞の有意な増加を認めた。【結論】精索静脈瘤の造精機能障害の原因とされる酸化ストレスは水素水の投与により改善された。水素水は精索静脈瘤においてalternative therapyとなる可能性がある。27基-47:てんかん原性形成の分子機構の解明-乳酸トランスポーターの関与- 研究代表者:宮本 修(生理学2) てんかんの神経回路形成とそのエネルギー源としての乳酸動態の関連およびその下流にある細胞内情報伝達系としてのリアノジン受容体(RyR)の変化について、難治性てんかんのモデルであるキンドリング動物を用いて検討した。ラットの扁桃体にステンレス電極を埋め込み、1日1回の電気刺激(300~500μA)でけいれん発作を誘発し、これを10日程度繰り返すことでキンドリング ラットを作製した。キンドリングラット群、刺激のみ群、sham群のラット海馬を取り出し、モノカルボン酸トランスポーター(MCT)とRyRの免疫染色およびウェスタンブロットを行った。MCTはMCT1とMCT2、RyRはRyR1~3のサブタイプについてそれぞれ解析した。 MCTについてはn数が少なく統計解析はできなかったが、MCT1についてはキンドリングラットで増える傾向があった。一方、RyRについてはサブタイプの中で脳内に最も広く分布しているRyR2がキンドリングラットで有意に増えた。ニューロンはエネルギー源として主にアストロサイトから乳酸を供給されるが、アストロサイトに多く存在するMCT1の上昇傾向はてんかんの神経回路形成により多くの乳酸の供給を必要とすることを示しているのかもしれない。さらに、この回路形成にはRyR2の上昇によるCa2+を介した細胞内情報伝達系の活性化が関与していることが示唆される。S30川 崎 医 学 会 誌

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