医学会誌43-補遺号
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28基-107:嗅球深層における投射ニューロン調節シナプス神経回路の形態学的解析研究代表者:野津 英司(解剖学) 嗅球は嗅上皮からの嗅覚情報を受け、情報を処理し、より高次の中枢へ投射する領域である。この情報処理には嗅球の介在ニューロンが重要な役割を果たすと考えられ、その神経回路の解析が進められている。我々は、嗅球からの出力に関与すると考えられる嗅球深層部の内網状層(IPL)に位置し、カルシウム結合タンパクであるcalbindinを発現するニューロン(CBニューロン)に焦点を当て、免疫染色と電子顕微鏡連続切片法による解析を行い、その詳細な形態とシナプス結合を明らかにした。その結果、嗅球の投射ニューロンである僧帽細胞・房飾細胞の脱抑制を行うと考えられる回路、すなわち僧帽細胞・房飾細胞の主要な抑制ニューロンとして知られている顆粒細胞へ抑制性シナプスを形成していることを確認した。一方で、CBニューロンの樹状突起が分布するIPL は、僧帽細胞の細胞体と近接し、僧帽細胞の軸索および軸索起始部が分布する領域であり、これらの神経要素とCBニューロンとの間にシナプス結合が形成されている可能性が排除できない。本研究では、免疫染色によるCBニューロンの標識と、トレーサーの注入による僧帽細胞の標識による多重染色を行い、共焦点レーザー顕微鏡によるコンタクトの解析および電子顕微鏡での観察を組合せることにより、僧帽細胞-CBニューロン間のシナプス結合の検証を行った。28挑-9:マウス梨状皮質からの遠心性投射様式:PHA-Lを用いた研究研究代表者:中村 悠(解剖学) 梨状皮質は、嗅球から直接嗅覚情報を受け取る、一次嗅皮質である。嗅球の出力細胞には房飾細胞と僧帽細胞の2種類が存在するが、近年、前者は梨状皮質前部(APC:anterior piriform cortex)の吻側腹側部(APCvr)へ入力し、後者はそれ以外の部位(APCd:APC背側部、PPC:梨状皮質後部)へ投射することが明らかになった。一方、梨状皮質からの出力に関しては、APCvrの投射先は報告があるものの、それ以外の領域については、感度の低いトレーサーを用いた所見のみであった。そこで本研究では、脳内の微小領域に限局注入することが可能な、高感度順行性トレーサーであるPHA-Lを用い、梨状皮質ニューロンの投射様式を再検討した。PHA-Lをマウス梨状皮質内に微量注入した結果、標識された軸索線維の分布は、過去に報告されているAPCおよびPPCからの投射様式と類似していた。このことは、少なくとも梨状皮質からの主な出力様式にはトポグラフィーがないことを示唆している。今後はPHA-L標識の所見を増やし、梨状皮質からの投射をより詳細に解析していく予定である。また、梨状皮質内の房飾細胞受容部位(APCvr)と僧帽細胞受容部位(APCdおよびPPC)が、嗅球以外のどのような脳領域から入力を受けるかについても、逆行性トレーサーを用いて解析を進めていき、梨状皮質における入出力を明らかにしていく。S25
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