医学会誌43-補遺号
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28基-13: 珪肺症における自己免疫疾患発症をもたらす増悪因子の検討研究代表者:李 順姫(衛生学) 珪肺症では肺の線維化に伴う慢性の呼吸不全の他に、特筆すべき点として、多発性硬化症、リウマチ、強皮症、近年ではANCA関連血管炎などの自己免疫疾患を高頻度で合併することが報告されている。我々は、体内に取り込まれ貯留した珪酸が、長期にわたり免疫細胞の極性化に影響を与 え、T細胞の制動システムを狂わすことが自己免疫の暴走を引き起こす一因になると考えている。これまでに、健常人由来免疫細胞に珪酸曝露を施すと、自己免疫疾患増悪に関わるTh17細胞群の分化、維持に重要なサイトカインであるIL-6やIL-23が増加することを見いだした。この結果は、珪酸が自己免疫疾患発症に少なからず関与していることをex vivoでも再現したものと考えている。 近年、細菌やウィルス感染が自己免疫疾患と密接に関わっていることが報告されている。すべての珪肺症例で自己免疫疾患が併発するとは限らない事実は、患者の個人差や環境の差に加え「感染の有無」もその背景にあるのかもしれない。本研究では、TLRアゴニストを珪酸存在下でCD4+ T細胞と樹状細胞の混合培養系に添加し、様々な炎症因子の変動を追跡した。現在、特定のTLRアゴニストと珪酸を同時添加した群で若干ながらサイトカインの増加傾向が見られている。今後より詳細な検討が必要であるが、本結果は「感染」と珪酸曝露との同時進行で自己免疫疾患が増悪される可能性を示すものと考えている。28基-30:がん微小環境における酸化還元状態のリンパ行性転移への影響研究代表者:山内 明(生化学) がん微小環境では、炎症による酸化ストレスが癌細胞の転移・浸潤に影響していると考えられるが、酸化ストレスとリンパ行性転移およびリンパ管新生との関係は不明である。研究代表者は、Oxford大学John Radcliffe HospitalのProf David Jacksonラボとの共同研究によりリンパ管内皮細胞の初代培養細胞の解析を進めてきた。本研究ではリンパ内皮細胞表面分子でありヒアルロン酸結合分子であるLYVE-1の酸化ストレス時の性状の解析、および、予後不良な癌の代表である膵癌の細胞株BxPC3の走化性とリンパ内皮細胞の関連性を評価した。 リンパ内皮細胞表面分子LYVE-1は、細胞表面上にホモダイマーとして存在しており、酸化ストレスによりモノマー:ダイマーの存在比がダイマーに傾くことが分かった。一方、リンパ内皮細胞培養上清あるいはリンパ内皮細胞そのものに対して、BxPC3細胞が強い走化性を示すことが分かり、癌のリンパ行性転移にリンパ内皮細胞が重要な役割を果たしていることが示唆された。 現在、酸化ストレス後のリンパ内皮細胞と癌細胞走化性の相互作用の解析を進めている。― セッション3 ―S18川 崎 医 学 会 誌

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