医学会誌42-補遺号
99/102

研究課題:進行性腎障害の進展機序解明研究発表者:木村 雄人(川崎医科大学3年) 腎臓の働きは大きく分けて3つに分類することができる。Ⅰ老廃物や毒素の排泄(血液の浄化)、Ⅱ体内の水分量や電解質の調整、Ⅲホルモンの分泌と調節である。腎臓病になるとこれらの機能のどれか、または全ての機能が低下してしまう。腎臓は体内のごみの処理を担っている臓器である為、腎機能の低下は他の臓器の異常の原因となり、心臓等の機能低下も引き起こす。では何が腎臓を悪くするのであろうか。現代においてその主な要因は糖尿病・高血圧などの生活習慣である。とくに食生活の腎疾患進展における影響は大きい。過剰な塩分摂取やたんぱく質摂取は腎臓に負担をかける大きな要因である。 実際の腎臓病治療の現状はどうだろうか。これは主に腎薬物・食事療法があるが、治療に用いられる薬物は降圧薬など原疾患に対する治療が主である。実際、腎臓に根本的に働きかけ、腎機能を回復する薬はまだない。その理由として腎臓病の根本的な原因(腎疾患進展における共通経路)が、いまだ解明されていないからである。 この共通経路を解明し腎臓治療の新規開発を目的として研究を行った。研究目的として「腎疾患進展における共通経路の解明」するため腎臓の炎症・線維化をきたす一側尿管結紮モデルを作成し検討した。研究課題:TDP1低発現肺癌細胞株におけるTDP2発現レベルと薬剤耐性についての基礎的検討研究発表者:遠坂 瞳(川崎医科大学3年) Tyrosyl-DNA phosphodiesterase 1 (TDP1)はTopoisomerase I (Top I) 阻害剤の効果予測因子の1つである。近年、抗HIV薬として知られるヌクレオチド逆転写酵素阻害剤であるAbacavirが成人T細胞性リンパ腫細胞において有効性を示し、その機序としてはTDP1の低発現が示唆された。我々は肺癌細胞株ではTDP1低発現のものが多いことに着目し、Top I阻害剤とAbacavirの併用効果について検討を進めてきた。一方で、TDP1低発現にもかかわらずAbacavirやTop I阻害剤に耐性を示す細胞株が存在しており、その耐性機序について検討を進めてきた。さらに近年、TDP2がTDP1の存在しない状況下でもTop Iに起因するDNA傷害の修復を促進することが示された。以上より、我々はTDP1低発現細胞におけるこれら薬剤耐性にTDP2発現量が関与しているのではないかとの仮説のもと、本研究を立案した。各肺癌細胞株におけるTDP2発現量をquantitative RT-PCRにて測定した。既知のTDP1発現レベルと各薬剤の感受性と比較検討した。TDP1低発現・薬剤耐性の4つの細胞株のうち、1つの細胞株においてTDP2の高発現が認められた。この細胞株においてさらに検討を進めていく必要性が示唆された。― 医学研究への扉 ―S95

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 99

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です