医学会誌42-補遺号
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研究課題名:上肢運動におけるラテラリティに関する研究研究代表者:大山 剛史(岡山県立大学 情報工学部人間情報工学科) ヒトの左右の上肢は同様な構造を有しているにもかかわらず、利き手・非利き手として知られるようにその使われ方には違いがある。従来、利き手と非利き手の違いは日常生活を通じての使用機会の違いによる運動習熟の差であると理解され、非利き手は利き手よりも稚拙で未熟な運動しか生成できないとみなされてきた。ところが、最近20年ぐらいにおいて、いくつかの研究が非利き手の方が良いパフォーマンスを発揮できる運動タスクの存在を明らかにしてきた。これらの研究は上肢運動における利き手と非利き手の違いは運動習熟の違いというよりも、むしろ多様な運動タスクに効率的に対応するための分業化であることを予想している。利き手と非利き手がそれぞれ生成する運動の性質を調べることはヒトの運動制御の仕組みを明らかにするための手がかりとなるとともに、スポーツ等の現場でのタスクに応じた運動学習や、利き手交換訓練の効果的な手法の提案に活用できる。本研究では発表者らが行った二つの研究について発表する。一つ目は、姿勢維持における左右差に関する研究で、手先が見えない条件においては非利き手の方が姿勢を元に戻すのが早く、かつ、その実現のために上腕二頭筋・三頭筋の共収縮を利用していることが示唆された。二つ目は曲線運動における左右差に関する研究で、手先の速度と加速度における利き手と非利き手の違いや、運動学習への応用について報告する。S94川 崎 医 学 会 誌

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