医学会誌42-補遺号
97/102
研究課題名:ペダリング運動の制御メカニズムに関する研究研究代表者:山㟢 大河(岡山県立大学 情報工学部情報システム工学科) ヒトが同じ運動を繰り返すとき、運動の「ばらつき」の分布は、しばしば偏ったものになる。これは、タスク達成のために重要な変数の「ばらつき」は抑制しつつ、そうでない変数の「ばらつき」は許容するような制御を、神経系が行っているからだと考えられている。このような立場から、神経系にとっての制御変数を推定する手法としてUncontrolled manifold (UCM) 解析が知られている。UCM解析は、運動計測で得た多次元データの「ばらつき」を、仮定した制御変数に影響を与える成分と与えない成分に分けて、両者の相対的な大きさを比較する。本研究では、その適用範囲を広げ、その背後にある運動制御系の仕組みを知る手がかりを得るために、自転車や足こぎ車椅子でのペダリング運動に対して、UCM解析を適用する新たな手法を開発した。そして、(1) 神経系は関節角速度を操作してクランク角速度を目標の値に保つと仮定した解析、及び(2)神経系は関節トルクを操作してクランク回転力を目標の値に保つと仮定した解析を行った。その結果、関節角速度や関節トルクの平均値からの偏差は、それぞれクランク角速度やクランク回転力に影響を与えない方向に大きくばらついていることを示した。これは、神経系がクランク角速度やクランク回転力を目標の値に保つような制御を行っているという傾向を、UCM解析によって定量化できる可能性を示している。研究課題名:振動環境下における人体の振動低減に関する研究研究代表者:大田 慎一郎(岡山県立大学 情報工学部人間情報工学科) 乗り物の乗車時などの振動環境下において、人体は振動に曝露される。この人体への振動は不快感の増加や視力低下などの影響を及ぼすため、人体の振動低減が重要な課題である。一方、自動車用シートのクッションの硬さは、人体-シート系の振動特性に影響を及ぼす。したがって、このクッションの特性をダイナミックに変化させることができれば、路面から伝達される人体の振動を低減させることが可能と考えられる。 そこで、本研究では、空気圧によってシートクッションの硬さを制御するウレタン封入エアセル(エアクッション)を提案し、空気圧と振動特性の関係を振動測定実験により調査した。その結果、空気圧を変化させると硬さと粘性が変化することが確認でき、ウレタン封入エアセルの振動特性が明らかになった。さらに、従来のエアセルより、ウレタン封入エアセルの方がばね定数と粘性を広範囲に変化可能であることがわかった。以上より、提案したウレタン封入エアセルを自動車用シートに用いることによる人体の振動低減への可能性が示唆された。S93
元のページ