医学会誌42-補遺号
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研究課題名:慢性炎症性疾患治療への応用を目指した抗ロイコトリエン抗体に関する基礎研究研究代表者:高橋 吉孝(岡山県立大学 保健福祉学部栄養学科) ロイコトリエンC4(LTC4)、LTD4、LTE4は強力な炎症性脂質メディエーターであり、気管支喘息のような急性炎症性疾患だけでなく、肺線維症のような慢性炎症性疾患の増悪に関わる。これまでの研究で、抗LTC4モノクローナル抗体が、1 nMの低濃度で標的細胞上の受容体への結合を阻害する中和抗体として働くことを見出した。また実際に、この抗体を気管支喘息モデルマウスに投与すると喘息の所見が軽快することを証明した。さらに、抗体を構成する2本のタンパクそれぞれの抗原結合部位をつないで1本にすることにより、変異の導入が自在に行える抗LTC4単鎖抗体を酵母で発現させ、これがマウスの肺から単離して培養した線維芽細胞によるコラーゲン産生を有意に抑制することを示し、本抗体が肺線維症に対する効果的な治療薬となる可能性を示した。 LTC4は分子内にグルタチオンを有し、ここから順次グルタミン酸、グリシンが外れてLTD4、LTE4となる。X線結晶解析に基づき網羅的に作成した抗LTC4単鎖抗体変異体の中でLTE4への親和性が上昇する変異体を2つ見出し、そのうち1つについて、変異させたアミノ酸残基とLTE4との間に、新たな水素結合が形成された可能性を示唆した。2つの変異を同時に加えたダブルミュータントはLTC4との親和性はあまり変化していなかったが、LTE4への親和性は、LTD4への親和性を大きく上回ったことから、これらの残基はLTE4上の異なる原子との間で新たな水素結合を形成することが示唆された。研究課題名:炎症性脂質メディエーターの合成を標的とした根菜類の葉に含まれる抗炎症物質の探索研究代表者:川上 祐生(岡山県立大学 保健福祉学部栄養学科) シクロオキシゲナーゼにはシクロオキシゲナーゼ-1とシクロオキシゲナーゼ-2という2つのアイソザイムが存在し、これらはプロスタグランジン類の生成に関与する。プロスタグランジンは、炎症やアレルギーなどの病態形成に重要な役割を果たすことが知られているため、シクロオキシゲナーゼの阻害は抗炎症効果の実現につながることが期待される。本研究では、ゴボウの葉に炎症性脂質メディエーターの生成酵素であるシクロオキシゲナーゼに対する阻害効果があるかを調べ、その阻害成分を明らかにすることを目的とした。ゴボウの葉抽出物を逆相HPLCにより数種類の画分に分け、シクロオキシゲナーゼ-2に対する阻害効果を検討した。その結果、溶出時間52~54分の画分に比較的強い阻害効果が確認された。このピークに含まれる化合物存在下で、シクロオキシゲナーゼ-2活性を測定すると、濃度依存的に本酵素を阻害し、その50%阻害濃度は6.4 μg/mlであった。また、シクロオキシゲナーゼ-1、白血球型12-リポキシゲナーゼ、血小板型12-リポキシゲナーゼも濃度依存的に阻害し、それぞれの50%阻害濃度は、6.2 μg/ml、59 μg/ml、75 μg/mlであった。5-リポキシゲナーゼは阻害しなかった。本研究により、ゴボウの葉に含まれる成分による抗炎症効果の一端が示された。S92川 崎 医 学 会 誌

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