医学会誌42-補遺号
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研究課題名:自己免疫疾患における新規α9インテグリンリガンドXCL1の役割研究代表者:今 重之(福山大学 薬学部) インテグリンは細胞外基質をリガンドとする細胞膜受容体であり、様々な疾患発症・増悪化に関与する。我々は、α9インテグリンは炎症性関節炎CAIAや実験的自己免疫性脳脊髄炎EAE増悪化に密接に関与することを明らかにしている。一方で、既知のα9インテグリンリガンドの中和抗体では、抗α9インテグリン抗体ほどの自己免疫疾患への寄与を見出せないことから、本研究では、自己免疫疾患に関わるα9インテグリンの新規リガンドの同定を目的に研究を進めた。 α9インテグリン機能を制御する内在性因子としてα9インテグリンスプライシングバリアントSFα9を報告している。SFα9リガンドは未知であるため、結合分子を探索した結果、ケモカインXCL1を同定した。プルダウンアッセイにより、XCL1はSFα9のみならずα9インテグリンと結合することを見出したことから、XCL1のα9インテグリン機能への役割を解析した結果、XCL1はα9インテグリン発現細胞を遊走能させ、炎症性関節炎CAIAをα9インテグリン依存的に増悪化させることを明らかにした。また、XCL1に対する中和抗体を新たに作製することで、XCL1は炎症性関節炎CAIAや実験的自己免疫性脳脊髄炎EAEの増悪化に関与することも確認した。 本研究から、α9インテグリンの自己免疫疾患に関わる生理的リガンドはXCL1であることを強く示唆する結果を得ることができた。研究課題名:薬学部における視線を利用した学修度評価の試み研究代表者:中道 上(福山大学 工学部情報工学科) 臨床に強い薬剤師を生み出すために6年制教育が始まり、福山大学では「福山大学方式」として事前学習及び病院薬局実習を全員必須とする教育を日本で初めて取り入れている。 本研究では、薬学部学生の処方監査の熟達度として、それらの実習による学修度に着目し、処方せんの確認行動にどのような違いがあらわれるのか実験により明らかにした。確認行動として、視線と画面の交点である注視点に着目し、薬学部4年生5名と5年生4名の学生に対して処方監査における処方せんの確認行動時の注視点移動の計測を行った。5年生は、平成26年度の薬学共用試験に合格し、OSCE試験、CBT試験に事前教育を受け合格した上で、薬局や病院での第1期実務実習を終えた者である。 実験の結果、4年生は5名×6課題の30課題のうち正答は9課題であり、正答率は30%となった。また5年生は4名×6課題の24課題のうち正答は19課題であり、正答率は79%となった。この結果から、学習が進むにつれて正答率が向上することが確認された。 そして確認行動時の注視点の動きを分析した結果、学修度が高まるにつれて注視点移動距離、注視点移動速度には正誤の差があらわれ、正答時には注視点移動距離が短く、注視点移動速度が遅くなった。これらの結果は、薬剤師の処方監査の熟達度を測るメトリクスや注視点移動の特徴からの正誤判定として活用できる可能性を示唆するものである。S91

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