医学会誌42-補遺号
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研究課題名:プライベート音空間を有する看護支援スマートベッドシステム研究代表者:仲嶋 一(福山大学 工学部スマートシステム学科) 看護師の疲労は医療ミスの一因であり、看護師の負荷軽減が重要な課題となっている。中でも夜間の頻繁なナースコールは疲労を増大させると共に、相部屋においては看護師と患者とのやり取りが他の患者の安眠の妨げになっている。そこで我々は、保有技術である音波制御技術と信号解析技術を活かし、対象患者のみに閉じたコミュニケーション手段でナースコールの負荷を軽減するスマートベッドシステムを開発中である。 本システムは、患者の耳元でのみ可聴な音場制限スピーカと患者の小さな音声を選択増幅する音源特定マイクを装着してプライベートな音空間を形成するスマートベッドと、患者の音声を認識し看護師に連絡するコンピュータ・通信システムで構成される。 音源特定マイクは患者のつぶやきをナースコールとしてピックアップしてシステムの対応を開始し、音場制限スピーカにより他の患者に迷惑をかけることなく対象患者と対話する。音声解析・認識により患者の切迫度合を判断して看護師に連絡することで患者のプライオリティに応じた効率的な対処が可能となり負荷低減が図れると共に、仮に看護師が他の患者の対応で塞がっている場合でもシステムが患者とのコミュニケーションを確保することで患者の不安軽減が可能となる。昨年度は、本システムのインタフェースである、音場制限スピーカの開発を行った。今年度は御器谷財団の助成を得てベッドシステムの構築を行っている。研究課題名:水素処理チタン合金の超塑性とその応用研究代表者:中東 潤(福山大学 工学部機械システム工学科) チタン合金の高性能化、あるいは新機能創出の手段として結晶粒微細化があり、その手法の一つとして水素処理法がある。この水素処理は水素吸蔵-溶体化・マルテンサイト(α´)化(焼入れ)-熱間圧延-脱水素処理で構成されており、素材そのものの成分を一切変えずに、しかもバルクの状態のままでα(HCP)+β(BCC)型チタン合金の結晶粒径(α粒径)を1μm以下に微細化することができる。この処理によって得られたα+β型Ti-6Al-4V合金や、α+β型でもややβ相の割合が多いβ-rich α+β型Ti-4.5Al-3V-2Mo-2Fe合金の結晶粒径(α粒径)は0.5μmもしくはそれ以下の等軸微細粒組織となり、優れた常温引張特性を示すことがわかっている。そこで本研究では、この水素処理チタン合金の超塑性特性を調べ、さらにその応用として歯科補綴物の義歯床およびメタルフレームの試作を超塑性加工法にて行った。超塑性引張試験を行った結果、α+β型Ti-6Al-4V合金は9000%以上、Ti-4.5Al-3V-2Mo-2Fe合金においては10000%を超える極めて大きな超塑性伸びを示すことがわかった。義歯床及びメタルフレームを超塑性加工法にて試作した結果、義歯床については板厚は比較的均一で、割れ等も観察されなかった。メタルフレームについては精度の面で課題が残っており、今後さらなる加工条件の探索が必要である。S90川 崎 医 学 会 誌

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