医学会誌42-補遺号
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27基-65:自己免疫疾患未発症の珪肺症例における血中サイトカインおよび可溶性受容体の解析研究代表者:李 順姫(衛生学) 典型的な塵肺症である珪肺症は、呼吸器病変のみならず、強皮症やCaplan症候群、さらに近年ではANCA関連血管炎などを併発することが知られている。我々はこれまでに、珪肺症由来PBMCでFasLのdecoy receptorであるDcR3のmRNA発現が増加していることを報告した(Otsuki et al, 2000)。DcR3の増加はFas/FasLシグナルを阻害し、自己応答性の免疫細胞のアポトーシスを抑制することで自己免疫疾患発症をもたらすと考えられる。本研究では、珪肺症例において自己免疫疾患を高頻度で併発することから、珪肺症例におけるDcR3の血漿中濃度と自己免疫疾患の指標因子および呼吸器疾患指標がどのように相関するのか検討した。【方法】健常人、珪肺症、強皮症検体は川崎医科大学附属病院、草加病院および日生浦上病院(岡山県)のご協力のもと収集した。各血漿中因子はELISA法を用いて測定した。統計解析はSPSS統計解析ソフトを用いて解析した。【結果・考察】珪肺症例において、血漿DcR3は顕著に高まり、免疫活性化の指標であるTGF-βおよびsIL-2Rと相関を示した。因子分析の結果、DcR3は抗核抗体(ANA)、P-ANCA、C-ANCA、血漿IL-6およびGCSFと第1因子を構成した。これらの結果は、珪肺症例における血漿DcR3値は免疫異常の指標となりうることを強く示唆している。27基-57: 5族金属元素をドープしたナノシートの特性研究代表者:吉岡 大輔(自然科学) これまでの研究結果から、ランタノイド担持はチタン酸ナノシート(TNS)の光誘起酸化還元反応により進行し、また、ランタノイド担持チタン酸ナノシート(Ln/TNS)の発光は、TNSの励起、TNSからランタノイドイオン(Ln3+)へのエネルギー伝播、Ln3+4f軌道電子のf-f遷移によるものと仮定した。Ti元素を任意量の5族元素で置換したTNS(M-TNS: M=V、Nb、Ta)を合成し、ランタノイド担持反応およびLn/TNSの蛍光発光に及ぼす置換の効果の検討から、担持反応および発光機構についての仮定の検証を行った。 M-TNSのランタノイド担持量を検討した結果、光触媒活性なNbやTaへの置換では担持量の増加が見られ、不活性なVでは担持量が減少した。この結果から、担持反応についての仮定が正しいこと証明された。また、発光強度についての検討結果から、発光機構について詳細な情報を得ることができた。Nb-TNSやTa-TNSでは無置換のTNSのものよりも高エネルギー側に、V-TNSでは低エネルギー側に新しい励起準位を形成した。Eu3+やTb3+を担持した場合、Nb-TNSやTa-TNSではTNSに担持したときよりも発光強度を増大させ、Sm3+やDy3+を担持した場合では、反対に発光強度を減少させた。NbやTaで置換したことで、無置換のTNSよりも大きなエネルギーがLn3+へと伝わる。しかし、高エネルギーの準位に励起されると、Sm3+やDy3+の励起準位は密であるため、最低励起準位に達するまでに無放射失活を起こす確率が高くなる。このため、Sm3+やDy3+を担持したNb-TNSやTa-TNSでは発光強度の減少がみられた。S80川 崎 医 学 会 誌

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