医学会誌42-補遺号
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27基-56:アポトーシスの分子機構の解析研究代表者:刀祢 重信(生化学) これまでアポトーシスの最終過程で起きる核凝縮の機構について解析してきた。これに加え、アポトーシスの最も初期のDNA障害を細胞が感知するシステムについても解析を続けてきたので今回報告したい。DNA修復系とアポトーシス経路のクロストークを解析するために11種のDNA修復蛋白の遺伝子をノックアウト(KO)したDT40細胞株にX線、紫外線、エトポシドを作用させた。このDT40細胞はp53を発現しない。野生型と大部分のmutant株はアポトーシスを起こしたが、DNA依存性タンパクキナーゼ(DNA-PK)とその制御蛋白のKu70の欠損株は、全くアポトーシスを起こさなかった。DNA-PKがDNA修復で働くのみならず、DNA障害をミトコンドリアに伝える未知の経路の中枢にあることを強く示唆する。そこで2次元電気泳動法で野生株とDNA-PK欠損株を比較し、唯一異なるスポットを質量分析計で同定すると、TPD52L2という蛋白質であった。この蛋白はDNA-PKによってリン酸化されると考えられ、3カ所のリン酸化可能なセリンを持つ。まずこの蛋白をKOしようと試みたが、ダブル欠損株は得られず、この蛋白のKO株は致死になると考えられる。現在、FLAG 標識したTPD52L2(野生型またはセリンを他のアミノ酸に置換したもの)を強制発現させた後に内在性TPD52L2をKOしてからアポトーシスさせる系を構築中である。仮説が正しければリン酸化できないTPD52L2を大量に発現させるとDNA障害でDNA-PKが活性化されてもミトコンドリアにシグナルが伝えられずアポトーシスが起きないはずである。27基-76:ABIN-3のAHD2ドメインを介するアポトーシス制御分子の同定研究代表者:五十嵐 英哉(免疫学) A20/ABINsはTNFRシグナル分子をユビキチン化することにより分解・不活性化してNF-kBを抑制するnegative feed-back loopを形成し、炎症遷延化による生体への障害を回避している。しかし一方で、A20/ABINsが関節リウマチ(RA)由来滑膜線維芽細胞(FLS)において炎症性サイトカインを誘導し得ることを見出した(Igarashi et al., Immunol. Lett., 2012)。ABINファミリーの中でも特に機能解析が進んでいないABIN-3の役割を明らかにする目的でABIN-3を恒常的に発現するRA由来FLS形質安定細胞株を樹立したところ、増殖能の低下、細胞サイズの増大などの形質変化が認められた。ABIN-3には酵素活性はないが、ユビキチン化したタンパク分子と結合するドメイン(AHD)があることから、これらの形質変化はABIN-3会合分子の機能によることが考えられた。免疫沈降によって共沈されるタンパク質を質量分析したところ、E3ユビキチンリガーゼが同定された。ABIN-3のC末にはこのユビキチンリガーゼとの結合モチーフが存在しており、また特異的抗体によるウエスタンブロットによってこの会合を確認した。さらに、会合の再確認を行う目的で作製した、結合モチーフに機能喪失型変異を導入したABIN-3変異体の形質安定細胞株は細胞死に高い感受性を示すことがわかった。S75

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