医学会誌42-補遺号
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27基-106:腸内環境変化による腸内細菌叢変化が慢性腎不全進行に及ぼす影響の検討研究代表者:藤本 壮八(健康管理学) 腸内細菌叢は生体内共生環境として個体の恒常性維持に重要な役割を果たす。腎臓病患者における腸内細菌叢の変化は、栄養障害、全身性または局所性の炎症、尿毒素産生の一因になり得る。リン酸塩はBacteria増殖を促進する。リン酸塩吸着で、腸内細菌叢が変化する可能性は高い。炭酸ランタンの腸内細菌叢に対する影響を、腎不全モデルマウスを用いて検討した。8W齢雄性ICRマウスおよび自然発症ネフローゼモデルマウス (ICGNマウス) を用いた。各々に通常餌または2%炭酸ランタン混合餌を5週間与えた計4群で検討した。腸内細菌叢はT-RFLP法で測定した。糞便中および血中腐敗産物 (インドール、フェノール、パラクレゾール) の定量分析を行った。糞便中細菌叢解析では、 ICRマウスと比べICGNマウスにて悪玉菌クロストリジウムの増加、 日和見菌バクテロイデスの減少を認めた。炭酸ランタン投与によりクロストリジウムは減少し、 善玉菌ラクトバチルスは増加した。ICGNマウス糞便中のフェノール、 パラクレゾールは増加していた。ICGNマウス血清中ではインドキシル硫酸、フェノール、パラクレゾールが増加しており、一部は炭酸ランタン投与により減少した。細胞間Tight Junction関連蛋白Occludin、Claudin-1の蛋白発現量はICGNマウスの回腸上皮および上行結腸上皮で減少しており、炭酸ランタン投与により保持が認められた。炭酸ランタンは腎不全マウスの腸内細菌叢の変容を生じさせ、腸管上皮バリア機能の保持をもたらし、腎障害を軽減させる可能性が示唆された。27ス-6:抑うつ症状に及ぼす腸内細菌叢の役割の検討 研究代表者:西本 高明(免疫学)【背景】ADPリボシルシクラーゼ活性を持つGPIアンカー型膜外酵素BST-1を欠損するマウス (BST-1KO)は不安や抑うつ症状が増強する。本研究ではBST-1欠損マウスで増強している抑うつ様症状に腸内細菌叢が関与しているかを検討した。【実験】野生型のSPF飼育のマウス(以下B6J-SPF)を対照として、無菌環境下で出生・生育させた8~9週齢の野生型マウス(以下B6J-GF)或はBST-1KO(以下BST-1KO-GF)に強制水泳試験、尾懸垂試験をそれぞれ6分間実施した。6分間のうち、残り4分間の無動時間を測定し、抑うつ様症状の指標とした。【結果と考察】尾懸垂における無動時間は、BST-1KO-SPFの方がB6J-SPFより長い、即ちBST-1KOは抑うつ様症状の強い傾向がみられた。一方、B6J-SPFとB6J-GFの比較ではB6J-GFの方が、無動時間が短い傾向にあった。興味深いことに、B6J-SPFとBST-1KO-GFの比較でもBST-1KO-GFの方が、無動時間の短い傾向を示した。BST-1KO-SPFとBST-1KO-GFの無動時間がB6J-SPFと比較して正反対の結果を呈したことは、SPF環境飼育マウスで認められるBST-1KOの抑うつ傾向は、腸内細菌叢依存性であるという可能性を示唆する。今回、被験マウスの数が少なく、有為差も得られなかったが、数を増やして検証する必要があると思われた。S74川 崎 医 学 会 誌

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