医学会誌42-補遺号
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27挑-4: 敗血症の早期診断と至適治療法におけるReal-time PCR法とバイオマーカーの有用性に関する研究研究代表者:椎野 泰和(救急医学)【背景】敗血症のバイオマーカーとしてプレセプシン(PSEP)とプロカルシトニン(PCT)が利用可能であるが、敗血症の早期診断における有用性は確立していない。【目的】PSEPとPCTを比較し、敗血症のバイオマーカーとしての有用性を検討する。【方法】2014年12月から2015年7月までに当院救急科に入院した患者を対象に、血液培養が採取される際にPSEPとPCTを同時測定した。【結果】対象は106症例(複数回採取症例を含む)。カットオフ値をPSEP500pg/mL、PCT0.5ng/mlと設定し、結果が乖離した症例について検討を行ったところ、PSEP陰性PCT陽性を9症例、PSEP陽性PCT陰性症例を22症例認め、PCT陰性であってもPSEPが1000pg/mLを超えた7症例は全例敗血症が強く疑われる症例であった。PCTが1ng/mlを超える症例であっても熱傷症例では感染をともなっていないと推測される症例も認められた。【結語】PSEP、PCTいずれも偽陽性、偽陰性が疑われる症例を認め、バイオマーカーのみでの敗血症診断は危険である。また、今回の検討ではPCTが陰性であってもPSEPが1000pg/mLを超える症例では重篤な感染症である可能性が高いことが示唆された。今回は結果が乖離した症例に関する限定的な中間解析であり一般化はできない。2016年3月末時点で231症例が集積されており、血液培養、16srRNAを標的としたPCRの結果を追加し検討を行う予定である。27基-32:腸内粘膜細菌叢(粘膜バイオフィルム)と消化管疾患の関連性に関する研究研究代表者:松本 啓志(消化管内科学)【背景】近年の技術革新により腸内細菌解析は飛躍的な進歩をとげている。これらの多くが糞便を用いた研究であるが腸管内より直接粘膜に付着している細菌叢(粘膜バイオフィルム)を検討した臨床研究はほとんどない。【目的】大腸内視鏡検査時に腸内粘膜細菌叢(粘膜バイオフィルム)を採取の方法ならびに解析方法をを確立する。【方法】通常のポリエチレングリコールを用いた大腸内視鏡前処置を行い、内視鏡検査を行った。盲腸到達後、内視鏡を抜去しながら、内視鏡下に腸粘液を採取した。サンプル採取する場所は、回腸末端、上行結腸、S状結腸の3か所とした。腸粘液の採取に用いたのは、生検鉗子、ブラシ小、ブラシ大の3つを用いて、その採取量を比較した。粘液サンプルからDNA回収の方法は、通常Lysis buffer(AL)、組織用Lysis buffer(ATL)、アクロモペプチダーゼ含有Lysis buffer(酵素法)の3つの方法で行った。さらに腸粘膜細菌を直接観察するためにグラム染色ならびにギムザ染色を行った。【結果】被験者は 47名 平均年齢49.9±16.2歳(17-80)、男性24名であった。内視鏡所見は、異常なし16例、大腸腺腫13例、大腸炎(潰瘍性大腸炎など)12例、大腸癌5例、大腸憩室2例であった。身長 163.6±10.0cm (143.6-180.0)、体重 67.2±20.0kg (40-119.0)、BMI 25.2±6.3 (15.6-40.0)であった。腸粘液細菌の採取量は、ブラシ大を用いた方法がすべての部位でブラシ小、鉗子よりも多かった。またDNA回収は回腸では酵素法が、大腸ではATL法でDNA濃度が高かった。酵素法およびATL法の2サンプルで次世代シークエンスを用いた解析が可能であることを確認した。【結論】サンプル数は少ないもののDNA回収はできており、解析可能であった。これらの検体を用いて、現在、種々の新患でのサンプリングを行い、今後、共同研究機関で次世代シークエンスを用いた系統解析を行う予定である。S73

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