医学会誌42-補遺号
73/102

27基-7:風疹低抗体価者における風疹ワクチン接種後のT細胞およびB細胞の免疫獲得について研究代表者:寺田 喜平(小児科学)【目的】妊婦の風疹罹患後先天性風疹症候群の児が高率で出生する。風疹抗体陽性でも再感染があり、国内外から先天性風疹症候群の報告が多数ある。わが国では抗体陰性(HI抗体8倍未満)だけでなく16倍以下もワクチン接種を勧奨している。【対象と方法】細胞性免疫(CMI)および抗体を通して再感染が発生する基礎的な機序を検討した。65名のボランティア大学生(うちHI抗体価16倍以下の39名はワクチン接種後も検討)を対象に抗体価とインターフェロンγ遊離法でCMIを検討した。【結果と考察】抗体陰性の7/11名がワクチン接種歴あり、その4/7名がCMI陽性であった。また抗体陽性であってもCMI陰性が半数あった。経過ともに抗体価が陰性化する2次性vaccine failureの原因として、CMIが獲得されなかったこととの関連が推定された。また風疹ワクチン接種後に抗体価は有意に増加したが、本対象ではIFN-γ値(CMI)を有意に増加させなかった。2回のワクチン接種後も4/7名はCMI陽性にもかかわらず、抗体陰性のままであった。他の報告では風疹はHLAタイプによってT細胞やB細胞のどちらかの反応性となることが示唆されており、ワクチン接種後抗体陽転化しない例の原因と思われたが、多くはCMIが陽性であった。自然感染群とワクチン接種群との比較では、自然感染群でIFN-γ値(CMI)は有意に高値であった。【結論】風疹抗体価のみでは風疹に対する感染防御免疫を知ることができず、CMIが再感染防止に重要なことが判明した。27基-91:活性酸素産生タンパク質gp91phox結合抗体(7D5)の解析研究代表者:栗林 太(生化学) 好中球は病原微生物等を貪食すると、細胞休止期には細胞内に存在する蛋白質が、細胞膜に移行して膜蛋白質であるシトクロームb558(p22phoxとgp91phoxのヘテロダイマー)と結合し、食細胞NADPHオキシダーゼは活性化される。この活性化型NADPHオキシダーゼは活性酸素の1種であるスーパーオキシド(O2-)を生成し、このO2-から派生した様々な活性酸素種は強力な殺菌作用を持つ。これらオキシダーゼ複合体を構成する蛋白質の1つでも遺伝的に障害されると、慢性肉芽腫症(CGD)になり、重篤な感染症を繰り返し、多くは少年期に死亡する。これら活性酸素生成タンパク質の内、gp91phoxだけは性染色体にコードされているので、患者の80%程度は男児である。これまで、CGDの診断は申請者等が作成したモノクローナル抗体(7D5)により行ってきた。この抗体は、gp91phoxを細胞胞外から認識する抗体であり、小児の全血0.1mL程度から診断が可能であり、非常に便利ではあったが、エピトープ(gp91phox上の抗原)は不明のままであった。本研究では、この7D5の抗原を決定することにある。そのために、7D5由来のScFv(7D5-derived single chain fragment of variable region)の作成を試みたので報告する。まず、マウス7D5産生B細胞からcDNAを調整し、VHとVLの配列を決定した。この配列は、アミノ酸分析からも確認した。その後、VHとVLをリンカーにて結合し、大腸菌に発現させ、gp91phoxへの結合実験を行う予定である。S69

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 73

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です