医学会誌42-補遺号
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27基-59:ヘルペスウイルス感染による表皮棘融解・ウイルス性巨細胞形成機序の解明 研究代表者:山本 剛伸(皮膚科学) 単純ヘルペスウイルス(HSV)感染による皮膚症状として小水疱を形成する。病理組織学的特徴として、皮膚表皮内に棘融解を認め、ウイルス性巨細胞が出現する。このメカニズムについて詳細は不明であるため、HSV感染に伴う経時的な細胞形態の変化を確認した。 培養ケラチノサイトにHSVを感染させ、光学・電子顕微鏡でウイルス増殖過程の確認、細胞骨格の変化を確認した。その結果、感染2時間後にはHSVは核内に侵入し、6時間後には新しくウイルス粒子が放出される像が証明された。細胞骨格の解析では、感染2時間後には細胞質内に線維状の凝集が認められ、4-5時間後には細胞の形態が円形に変化した。感染3時間後には細胞間裂隙の狭小化を認め、6時間後にはcell to cell spreadによるHSVの感染拡大が確認された。 HSV感染細胞と非感染細胞を共培養し、細胞間の感染拡大を共焦点顕微鏡で確認したところ、共培養6時間後には非感染細胞もHSV(ICP-0)陽性となり、個細胞間の接触により感染拡大することが示された。 HSV感染後、最初に細胞質内細胞骨格の変化が生じ、ほぼ同時に細胞間接着分子の変化(細胞間裂隙の狭小化)をきたすことにより、細胞の円形化(病理組織学的棘融解に相当)が認められる。接触している細胞間はcell to cell spreadで感染拡大し、細胞膜の融合からウイルス性巨細胞形成に至ると考えた。27基-11: ウイルス-宿主間相互作用によるHTLV-1関連疾患発症の分子機構解明と治療戦略の構築(特許のために公表を控えた26基-67の成果を含む)26基-67:HTLV-1関連脊髄症モデルマウスによる慢性炎症発生機序の解明研究代表者:齊藤 峰輝(微生物学)【目的】成人T細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の転写制御因子であるTax及びHBZは、HTLV-1感染による発がん(成人T細胞白血病:ATL)・慢性炎症(HTLV-1関連脊髄症:HAM)双方の原因遺伝子であり、治療法・発症予防法開発の有効な標的と考えられる。Tax及びHBZの遺伝子配列には2つのウイルス型が存在し、A型を持つ感染者はB型を持つ感染者より発症リスクが約2倍高いことが報告されているが、その機序は不明である。本研究の目的は、ウイルス型特異的Tax及びHBZが発症に及ぼす病因的意義の解明である。【方法】テトラサイクリン応答プロモーターの下流に各ウイルス型の全長Tax及びHBZ遺伝子を組み込んだコンストラクトをヒトT細胞株に導入し、発現誘導前後で変動する遺伝子群を網羅的に解析した。また、TaxまたはHBZの標的遺伝子発現調節機構を解析するため、レポーター遺伝子アッセイを行った。【結果】ウイルス型特異的TaxまたはHBZにより、発現誘導・抑制される標的遺伝子群の種類と誘導効率が異なること、ウイルス型特異的Tax及びHBZには、転写制御因子としての機能の差が認められないことを明らかにした。【考察】ウイルス型特異的Tax及びHBZは、直接に転写を調節する以外のメカニズムで標的遺伝子群の種類と誘導効率の差に関与する可能性が示唆された。S68川 崎 医 学 会 誌

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