医学会誌42-補遺号
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27基-92: ボルテゾミブによるHLA抗体産生抑制効果の検討研究代表者:松橋 佳子(血液内科学) 同種造血細胞移植において、レシピエントのHLA抗体、特にドナー抗原特異抗体(Donor Specific Antibody; DSA)の存在はドナー幹細胞の生着に重大な影響を与える。HLA抗体の減量処置にはリツキシマブ、ボルテゾミブ(Bortezomib; BOR)や血漿交換、血小板輸血による吸着等が報告されているが確立された方法はない。造血細胞移植患者におけるBORのHLA抗体産生抑制効果の報告は殆どなく、移植前使用の最適な投与時期・回数は不明である。我々は、造血細胞移植前にBORを使用したHLA抗体陽性患者についてHLA抗体価を追跡した。HLA抗体検査は外注検査にてLuminex法を用い、抗体同定・各抗体のMFI(蛍光値)を経時的に測定した。BORは1.3mg/m2をday1、4、8、11に投与し1コースとした。症例1:1コース後に各DSAは前値の50-95%に、2コース後には21-83%に一部減弱したが、DR座に対するDSAがMFI 14,585と著明高値に留まった。症例2:1コース後に各DSAは前値の47-71%に一部減弱したが、B座に対するDSAがMFI 11,144と著明高値に留まった。同一患者においても各DSAの減少率は一様でなく、投与前にMFIが著明高値のDSAを有する例では、BOR1-2コースの単独投与では効果不十分である可能性がある。引き続き症例を蓄積し検討を重ねる。27基-37:赤血球膜蛋白異常症における溶血性貧血の程度を規定する因子の検索 研究代表者:末盛 晋一郎(検査診断学(病態解析)) 赤血球膜蛋白異常症は、赤血球膜蛋白異常により溶血をきたすことを特徴とする疾患群である。赤血球膜蛋白は赤血球形態および変形能の維持に寄与しており、膜蛋白に異常が生じると膜構造が破綻し、赤血球形態変化をきたす。形態変化をきたした赤血球は変形能が低下するために脾臓に滞留する。その結果、脾臓内のマクロファージに通常の寿命よりも早期に貪食され、赤血球破壊の亢進、即ち溶血を呈する。脾臓での溶血量が骨髄における赤血球造血量を上回った場合には貧血を呈する(溶血性貧血)。これまでの解析の結果、共通の膜蛋白異常を有する赤血球膜蛋白異常症症例間において溶血性貧血の程度に差があることが判明している。この現象は膜蛋白異常の相違では説明がつかず、溶血性貧血の程度を左右する未知の機序が存在すると考えられるが、その機序については未解明である。そこで本研究では溶血性貧血の程度を規定する機序について脾臓でのマクロファージによる赤血球貪食に着目し、マクロファージが赤血球貪食の際に標的分子とすると考えられるCD47の赤血球における発現量をflow cytometryを用いて解析した。今回、これまでに得られた解析結果を考察と共に報告する。― 環境と生体反応 ―S65

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