医学会誌42-補遺号
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27基-53: 骨髄異形成症候群から急性白血病へ移行する分子機構の探索 ~患者骨髄細胞から各段階の細胞株に至る一連の遺伝子変異解析研究代表者:通山 薫(検査診断学(病態解析)) 骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes;MDS)は、急性骨髄性白血病に移行しやすい予後不良の造血障害であるが、発症と病型移行の分子機構には未解明の点が多い。本研究の契機となった細胞株MDS92は研究代表者が約20年前に樹立したが、この培養細胞株を継代中に、あらたな7つの亜株を樹立することができた。MDS92とその亜株は、MDSから急性白血病への流れをインビトロで再現した、世界で唯一の培養細胞モデルのラインアップである。これらの細胞株と、発端となったMDS患者骨髄細胞を用いて全エクソーム解析をおこない相互比較することによって、病型進展に関わる遺伝子変異を探索し、MDSの病型移行・病態悪化の分子機構の一端を解明すること、そしてそれを防止する新しい治療戦略への道を開くことが本研究の目的である。 これまでの解析の結果、CEBPA変異、N-RAS変異は培養途上で出現し、各細胞株に受け継がれていることがわかった。またMDS92からMDS-Lへ移行する段階でHistone1H3C 変異(K27M)が検出された。この変異は小児脳幹腫瘍で報告があり、JMJD3阻害薬が有効とされているが、MDS-Lへの特異的抑制効果はインビトロでは明確でなかった。どの亜株にもEZH2には有意な変異が見出されていないが、ヒストン修飾の観点からさらに検討する予定である。26基-99: 乳がん腋窩リンパ節郭清時における患側上肢リンパ管流温存手術の研究(Prospective Feasibility Study)研究代表者:中島 一毅(総合外科学) 本研究はセンチネルリンパ節生検陽性時に追加して行われる腋窩リンパ節郭清時に選択的にリンパ節郭清を行い、術後上腕浮腫を予防する術式を開発する目的で計画した。 具体的には蛍光色素カメラHEMSを用い、上腕のリンパ流を蛍光発色させ、これらのリンパ管を温存することを想定していた。 臨床試験前の準備として、リンパ管が最も描出されるインドシアニングリーンの濃度を調査した。通常濃度の3倍(ルーチンにセンチネルリンパ節生検に使用している濃度)、通常投与濃度(肝予備能検査に使用される濃度)、通常濃度の1/3、1/10、1/30、1/50と濃度を変え、HEMSでの発色を実験したところ、細いリンパ管が見えやすい濃度は1/30と判明した。次に明らかなリンパ節転移がある症例での腋窩リンパ節郭清の手術の際にHEMSにて観察を行ってみたが、明らかなリンパ節転移がある症例では、リンパ流の同定が極めて難しいことが判明した。 さらに海外での臨床試験において、温存手術予定で術後残乳房への放射線治療が予定されている症例であれば、センチネルリンパ節生検時に転移が認められても、転移が1-2個程度であれば、腋窩郭清を省略しても良いといる結果が報告され、海外、国内ともスタンダードになってきており、本研究の意義がなくなってしまった。 よって、本研究は今後、進める価値がないと判断し、新たな知見が得られるか、臨床的有用性が見いだされるまで中止することとした。 今回、リンパ管どのように描出されたか報告したい。S64川 崎 医 学 会 誌

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