医学会誌42-補遺号
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27基-66: 漢方薬による自然免疫賦活と炎症反応制御は癌悪液質治療の補完医療となるか。遺伝子改変癌悪液質モデルマウスを用いた検討 研究代表者:中村 隆文(産婦人科学1)【目的】腫瘍に炎症を誘導した遺伝子改変マウスを用いて、自然免疫賦活や抗炎症作用のあると考えられている漢方薬を投与して、腫瘍の浸潤進展の抑制や寿命延長の効果があるかを検討し、その漢方薬の作用機序を解明する。【方法】1)SV40T抗原を水晶体上皮に発現させて、上皮性未分化癌を眼球内に発症するαT3マウスと炎症性サイトカインであるヒトIL-1βを水晶体上皮に過剰に発現するαIL-1βマウスと交配させて癌悪液質モデルαT3βマウスを作製維持する。2)十全大補湯(TJ-48)・補中益気湯(TJ-41)・小柴胡湯(TJ-9)の1.5%混飼を作製して、αT3βマウスに長期間投与した場合のαT3βマウス腫瘍の増殖進展やαT3βマウスの寿命について検討した。3)漢方薬を投与されたマウスの腹腔内マクロファージを解析する。【結果】1)αT3βマウスは炎症により腫瘍の浸潤進展が増悪し, 通常のαT3マウスと比べ生存期間は有意(p=0.001)に短縮した。2)十全大補湯・補中益気湯投与αT3βマウスは非投与マウスと比較して寿命の差は認められなかったが、小柴胡湯投与αT3βマウスは有意に寿命の延長がみられた。3)長期生存しているαT3βマウスを病理学的検討すると腫瘍はほとんど痕跡なく消失していることがわかった。4)小柴胡湯投与マウスのマクロファージは貪食能の増加傾向がみられた。【結論】腫瘍局所の炎症によって癌の浸潤・進展が増悪しているマウスの寿命は小柴胡湯を投与することにより延長した。つまり炎症が強くマクロファージの浸潤の多い癌では小柴胡湯が有効である可能性が示唆された。27基-30:骨髄増殖性腫瘍における病因遺伝子変異解析と病態の解明研究代表者:近藤 敏範(血液内科学)【背景】本態性血小板血症(ET)の原因遺伝子としてはJAK2 V617F変異とCALR 遺伝子変異が知られているが、遺伝子変異の違いによる臨床像の相違については未だ明らかになっていないことが多い。我々はJAK2 変異群では変異allele量に比例してNAP scoreが高く、CALR 変異群では正常から低値となることを発見した。そこで、我々はET症例の好中球膜アルカリフォスタファーゼ発現レベル(sNAP)とNAP scoreおよび遺伝学的背景について検討した。【方法】ET症例27例(JAK2 変異16例、CALR 変異11例)を対象に、末梢血より多核白血球を分離し抗アルカリフォスタファーゼ抗体を用いたフローサイトメトリー法でMFIを測定した。【結果】全27例におけるNAP scoreとMFIの間には有意な強い相関関係がみられた(P<0.001,ρ=0.788)。MFIはJAK2 変異群 66.7±39.4、CALR 変異群 29.0±29.4で、CALR 変異群で有意に低値であった(P <0.001)。【考察】NAP scoreとsNAPには有意な強い相関がみられた。CALR 変異群のsNAPはJAK2 変異群に比して有意に低く、遺伝子変異の違いがsNAPに影響していることが示唆された。今後はその機序について検討していく予定である。S63

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