医学会誌42-補遺号
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27ス-5:肺癌におけるPD-L1発現による炎症予測と局所浸潤制御性T細胞の解析研究代表者:黒瀬 浩史(呼吸器内科学)【背景】腫瘍局所では、制御性T細胞(Treg)あるいは免疫チェックポイント分子の活性化などにより抗腫瘍免疫が抑制されている。本研究では、Tregにより抗腫瘍免疫が抑制されている癌微小環境を同定することを目的とした。【方法】当院を受診した非小細胞肺癌手術症例、および気管支鏡症例を対象として、腫瘍細胞のPD-L1発現、およびTILの多寡、TIL中のCD4、CD8 T細胞、Treg分画の抑制性分子の解析を行う。本年度は、上記のうちTIL解析を報告する。【結果】肺癌手術症例14例、および気管支鏡症例12例を解析した。手術症例における、PBMC中のCD4、CD8の割合は70.7%、25.9%、TILでは55.5%、39.8%であり、TILでは相対的にCD8優位であった。またPBMCおよびTILにおける活性化Tregは2.6%、10.8%であり、TILで優位であった。さらにTILではCD4、8、活性化TregいずれもPD-1+TIM-3+分画が多かった。TILではCD8と活性化Treg絶対数は正の相関を示す傾向があった。気管支鏡症例でも同様の傾向であった。【考察】TILにおいてCD8 T細胞が多く浸潤している症例はTreg浸潤が多い傾向にあり、局所の炎症によりTregが誘導されている可能性がある。今後腫瘍のPD-L1発現とTreg分画解析により、Treg除去が有効となる患者群を同定する。27基-39: 上部消化器癌患者に対する化学療法時のカルニチン濃度の変化と栄養状態および自覚症状の関連研究代表者:松本 英男(消化器外科学)【背景】カルニチンは脂肪酸の代謝に重要な役割を担うビタミン様物質であり、低栄養とカルニチン濃度は関連があるとされている。抗癌剤投与で尿細管でのカルニチンの再吸収と組織移行を促すカルニチントランスポーターOCTN2(organic cation transporter novel)の発現量が低下し、カルニチンの血中濃度が低下すると報告されている。【目的】胃癌患者でシスプラチンを含む抗癌剤投与時の、血清カルニチン濃度の変化と栄養状態の変化を測定しこの仮定を検証する。【方法】化学療法施行前にカルニチン測定、栄養状態を血清生化学検査(TP、Alb、リンパ球、ChoE、T.Chol)とbioelectrical impedance 法(InBody)を用いて体成分分析を測定した。同時にアンケート(EORCT-30+STO25)を行った。サイクル毎に同様の測定とアンケートを行った。【結果】2014年10月から2015年4月までにTS-1+CDDPの化学療法を行った男性3名と女性7名の10例に対して測定を行った。総カルニチン値は前値、2回開始前、3回開始前は54.5±13.7μmol/L、46.7±13.5μmol/L、41.4±14.8μmol/Lと有意に低下した(p=0.00349)。またTotal protein、Cholinesteraseも有意に(p=0.0218, 0.0418)低下した。Inbodyの計測では、骨格筋量、体脂肪率、内臓脂肪量、体重、BMIが優位に低下し、自覚症状については水分摂取状況と味覚の変化に有意な変化を認めた。【結論】繰り返す化学療法で血中カルニチン濃度が低下し、これにより栄養障害が起こり、自覚症状が増悪する可能性が示唆された。S61

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