医学会誌42-補遺号
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27基-33:乳癌ティッシュマイクロアレイを用いた新規バイオマーカーの検討研究代表者:鹿股 直樹(病理学2) ティッシュマイクロアレイ(tissue microarray,TMA)とは、多数症例のパラフィンブロックから数ミリ程度の少量を各々採取し、新たなパラフィンブロックを構築する技術であり、多数症例の免疫染色あるいはin situ ハイブリダイゼーションを、簡便・迅速かつ安価に施行することが可能である。また、それらの評価も迅速に行うことが可能となる。今回は、浸潤性乳癌の連続症例221例について、betacellulinとSnailの免疫染色を施行し、臨床病理学的因子と比較した。 Betacellulinは評価しえた217例全てで陽性所見が認められた。70~100%の陽性率であり、histologic scoreでは80~300であった。Betacellulin発現はTNM、脈管侵襲、組織学的異型度、核異型度、ER、PR、HER2、Ki-67インデックス、生存率との有意差は示さなかった。一方、Snailは、123/221(55.7%)で核での陽性所見を示した。SnailはTNM因子、脈管侵襲、HER2(p=0.109)および生存率とは有意な相関はなかったが、組織学的異型度(p<0.0001)、核異型度(p=0.0001)、Ki-67インデックス (p=0.001)とは各々、負の有意な相関を示した。ER(p=0.004)、PgR(p=0.001)とは正の相関関係を示した。27基-100: デジタル・パソロジーの手法を用いた前立腺肥大症核出腺腫の組織構成解析と慢性炎症との関連についての検討 研究代表者:宮地 禎幸(泌尿器科学)【目的】前立腺肥大症(BPH)は高齢男性の生活の質に大きくかかわる疾患である。加齢に伴うBPHの出現とは移行領域(TZ)の腫大であり、青年期のTZは腺構造を有していないが、肥大症結節においては腺構造を有するようになり、腺筋線維性結節の形で増生する。その成因として加齢によるホルモン環境の変化が一般的に考えられるが、近年、慢性炎症による間質増殖の誘導が注目を集めている。一方、臨床では前立腺体積と排尿症状は必ずしも一致しないことがよく経験される。この原因の一つとして肥大結節の腺上皮と線維筋性間質の比率の違いが考えられている。その比率は人種差があり、また個人差も大きいとされる。今回、経尿道的ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)で核出したTZの組織標本を用いて病理学的検討を行った。【方法】2007年9月から2012年3月までに当科でHoLEPを施行し、病理診断で前立腺癌と診断された症例を除いた225例の内、40例の核出標本を用いた。上皮はケラチン染色、腺管はPSA染色、繊維組織はマッソントリクローム染色し、さらに炎症細胞としてT cellリンパ球とマクロファージを免疫組織染色した。【結果】腺上皮と線維筋性間質の比率は30%であったが、年齢共に間質の割合が増加する傾向にあった。リンパ球浸潤は83%の症例で認められ、年齢共に増加する傾向があった。【考察】膀胱内でモーサレーターで細切、回収したHoLEPの核出組織は均一で理想的な肥大結節標本であり、BPHの発生機序の解析に有用といえる。S54川 崎 医 学 会 誌

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