医学会誌42-補遺号
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27基-98:婦人科悪性腫瘍のヌードマウスへの同所移植の検討 研究代表者:潮田 至央(産婦人科学1) 癌研究のひとつの問題点は、ヒトの体内で増殖転移する癌と同じ状況を実験動物で再現できないことにある。我々は、移植ヌードマウスに婦人科がんを再構築することを目指している。近年、子宮頸癌なら子宮頸部、卵巣癌なら卵巣というように癌の原発組織に癌組織を移植し増殖させる同所移植が、癌患者さんの臨床的な特徴をよく再現することが明らかとなり、注目されている。そこで、婦人科がんの同所移植に向けた検討を行った。 子宮頸癌4例、卵巣がん1例、子宮体癌1例の計6例の婦人科がんの手術検体からがん組織を切除し、約2mmの立方体に切除しヌードマウスの皮下に移植を行った。また、子宮頸癌の1例について、皮下移植と同時に子宮頸部への同所移植を行った。 その結果、子宮頸癌の1例で、皮下に移植した腫瘍の増大を認めた。腫瘍の生着率は全体で17%であった。生着した1例では、同時に4匹のヌードマウスに移植し、4匹すべてで腫瘍が生着し、皮下移植腫瘍の増大を認めた。同所移植に向けて、腫瘍量の増加を図るため、うち1匹の腫瘍を5匹のヌードマウスに継代移植し、腫瘍の増大を観察した。 同所移植は皮下移植に比較して技術的に難易度が高い。そのため、まず、皮下移植して腫瘍量を増加させた上で同所移植を行い、薬剤の感受性を調べる実験に用いるのが現実的である。皮下移植の生着率が低く、これを改善することが今後の課題である。27基-6: 甲状腺癌発生・進展に関与する因子の検討研究代表者:田中 克浩(乳腺甲状腺外科学) RETはレセプター型のチロシンキナーゼであるが、髄様癌では多く変異がみられることで有名であるが甲状腺乳頭癌にはほとんど発現していない。ところが染色体再配列により、RET のキナーゼドメインをコードするC末端側と、他のパートナー遺伝子のN末端側が結合してキメラ遺伝子を作ると、キメラタンパクであるRET/PTC が作り出される。RET/PTCは、容易に二量体を形成、自己リン酸化によって恒常的に活性化した状態となる。RET/PTCは、パートナー遺伝子の違いで15種類以上報告されているが、RET/PTC1とRET/PTC3で全体の90%を占める。今年度は手術治療を施行した45例の甲状腺癌原発巣(乳頭癌38例、低分化癌4例、濾胞癌1例、未分化癌2例)のRET/PTC1およびRET/PTC3の発現をreal-time PCR法を用いて検討した。RET/PTC-1、RET/PTC-3はそれぞれ30例中3例(すべて乳頭癌、6.7%)、6例(乳頭癌5例、低分化癌1例、13.3%)に発現が確認された。RET/PTC1の発現のある症例は若年者に多い傾向があり(中央値28 vs 53歳p=0.31)、DFSが短い傾向があった(p=0.0563)。RET/PTC3の発現症例は若年者に多い傾向があった(28 vs 52歳、p=0.09)がその他の臨床データーとの関係は認められなかった。一般にはRET/PTCは若年者に多くリンパ節転移が多い報告がみられるが、当科の検討では若年者は合致するが、リンパ節転移には関与がみられなかった。症例数を増やして検討したが、陽性症例が少なくさらに増やせば傾向が明らかになるかどうかは不明である。S53

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