医学会誌42-補遺号
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27基-103: ヒトセミノーマ様JKT-1におけるIgf2発現の検討研究代表者:藤井 智浩(泌尿器科学)【背景・目的】成長因子をコードするIgf2 遺伝子とノンコーディングRNA が転写されるH19 遺伝子が並んだIgf2/H19 遺伝子座の発現異常は、Beckwith-Wiedemann 症候群やSilver-Russell 症候群の原因の一つとされ、近年、種々の悪性新生物において、H19とIGF-2 の発現が報告されるようになった。セミノーマは、種々の悪性新生物の中でも、治療が奏効し、比較的予後がよい範疇に入るが、10-20 % は、first line の化学療法が無効である。治療抵抗性のヒトセミノーマにおいて、H19 または、IgF2 が新規治療の target になりうる可能性があると考え、本研究の着想に至った。【対象・方法】ヒトセミノーマcell line のJKT-1 を用い、H19 および IgF2遺伝子の発現の検討 (qPCR)及び、si RNA を用いてのH19 の knock down を行った。【結果】qPCR にて、H19 及びIGF-2 の発現を認め、siRNA にて、H19を30%程度 knock down させることに成功した (IgF-2 未施行)。また、population doubling time は、H19 knock down 群で有意に延長した(28.5h vs 40.5h)。【結論】H19 は、セミノーマの新規治療ターゲットとなる可能性がある。今後、in vitro およびin vivo での cell proliferation の詳細な検討を行う予定である。 また、同様に IgF-2 も検討を行う。27基-97:子宮頸癌における癌関連線維芽細胞に起因したリンパ節転移因子の同定 研究代表者:村田 卓也(産婦人科学1)【緒言】癌関連線維芽細胞(以下、CAF)は、癌の増殖、浸潤、転移に関与している。子宮頸癌組織から分離した初代培養CAFは癌細胞と共にヌードマウス皮下に移植すると、癌細胞の皮下リンパ節転移を起こす。しかし、初代培養CAFにSV40 largeT抗原遺伝子とhTERT遺伝子を導入した不死化CAF(以下、CCF-TT)は、リンパ節転移能を喪失していた。そのため、初代培養CAFとCCF-TTの遺伝子発現を網羅的に比較することにより、初代培養CAFのリンパ節転移因子を同定することを試みた。【材料と方法】子宮頸癌培養細胞ME180と共培養した初代培養CAF(以下、Co-F1)とCCF-TT(以下、 Co-TT)、単独培養の初代培養CAF(以下、F1)とCCF-TT(以下、TT)の4つの条件で培養した線維芽細胞からtotal RNAを調製し網羅的遺伝子発現解析を行い、Co-F1/Co-TTおよびF1/TTを比較検討した。【結果】2万3000遺伝子のオリゴDNAが載ったアレイを用いて網羅的遺伝子発現解析を行い、初代培養CAFとの共培養で発現が亢進している遺伝子を抽出。アノテーションを行い、転移に関与している可能性が高い3種類の遺伝子を同定した。【考察】3種類のうち1つは、これまでに多くの癌腫で増殖転移に深く関与することが報告されている。今後、子宮頸癌における解析を進める予定である。S52川 崎 医 学 会 誌
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