医学会誌42-補遺号
55/102
27基-63:頭頸部扁平上皮癌細胞におけるDKK3強制発現/ノックダウンの影響研究代表者:片瀬 直樹(分子生物学) 頭頸部扁平上皮癌(Head and Neck Squamous cell carcinoma: HNSCC)の発生や進展に関わる癌関連遺伝子についてはいまだ不明な点が多い。研究代表者はDKK3 遺伝子に着目して解析を進めてきた。DKK3はほとんどの癌で発現が低下していることから癌抑制遺伝子と考えられているが、これまでの研究でDKK3はHNSCCと食道扁平上皮癌のみに発現していることが明らかになり、HNSCC由来細胞でDKK3発現をノックダウンすると細胞の浸潤、遊走が有意に低下することを報告、DKK3がHNSCCでは消化管の腺癌等とは異なり、oncogenicに機能する可能性を指摘している。本研究では、HNSCC細胞でDKK3を過剰発現させると細胞の増殖、浸潤、遊走が増加するが、そのメカニズムがWnt signalとは無関係であることを明らかにした。さらなる検討の結果、DKK3過剰発現系ではEMTの亢進が認められ、DKK3とTGFβシグナルの相互作用の可能性が示唆された。DKK3過剰発現系については、ヌードマウス皮下への移植実験も行ったが、DKK3過剰発現細胞を移植するとコントロールに比較して腫瘍サイズとKi-67 indexが有意に増大することが明らかになった。今後もDKK3を介したシグナル調節の全体像を明らかにすることを目標に解析を行うとともに早期に論文発表を行う。27基-18:非小細胞肺癌におけるROR1シグナル伝達機構の解析 研究代表者:瀧川 奈義夫(総合内科学4)【目的】非小細胞肺癌細胞株および中皮腫細胞株において、ROR1が細胞増殖に関与していることを報告してきたが、そのメカニズムは不明であった。siROR1による抗腫瘍効果の原因を探索するため、細胞あるいは細胞外基質と接着して増殖し足場を失ったことで誘導される細胞死、すなわちアノイキス(anoikis)について検討した。さらに、ROR1阻害により抑制されるmRNAを網羅的に解析することにより、ROR1のシグナル伝達機構を明らかにすることとした。【方法と結果】 siROR1によりコロニー形成阻害が認められる2種の細胞株H28およびH2452を用いた。2種類のsiROR1を用いて、CytoSelect™ Poly-HEMA コートプレートを用いて生細胞のアノイキスを蛍光で、死細胞をエチジウムホモダイマー試薬で検出したところ、H28では差は認められなかったが、H2452では80±4.5%(平均生存率±標準偏差)と有意に低下していた(p=0.003)。H28において、マイクロアレイにてsiROR1により50%以上抑制されたmRNAには、DNA複製に関与するTOP2β、ROR1と58%のアミノ酸相同性のあるROR2に結合するWNT5A、非小細胞肺癌の血管新生に関与するケモカインであるCXCL5が認められた。【結論】 H28とH2452においてROR1阻害による増殖抑制メカニズムが異なる可能性が示唆された。S51
元のページ