医学会誌42-補遺号
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27基-14:膵β細胞ブドウ糖毒性の分子機構の解明研究代表者:金藤 秀明(糖尿病・代謝・内分泌内科学) 2型糖尿病の特徴は、膵β細胞におけるインスリンの生合成、分泌の低下および肝臓や末梢組織でのインスリン抵抗性である。そして臨床上最も大きな問題点は、高血糖が持続すると、β細胞におけるインスリン生合成および分泌障害はさらに顕著化し、また肝臓や末梢組織でのインスリン抵抗性もさらに増加するという悪循環に陥ることであり、これは高血糖毒性として臨床的にも広く知られている。そうした中で我々は、膵β細胞の糖毒性の分子機構にインスリン遺伝子の転写因子であるMafAやPDX-1の発現低下が関連していることを報告してきている。 本検討においては、肥満2型糖尿病モデルであるC57BKLJ-db/dbマウスに対して(尿に糖を排泄することによって血糖を低下させる)SGLT2阻害剤を投与して糖毒性を軽減させることによって、膵β細胞がどのように保護されるのかを検討した。その結果、インスリン生合成、グルコース応答性インスリン分泌、様々なβ細胞特異的因子の発現量(MafAやPDX-1)、β細胞massおよびβ細胞増殖能などがすべて回復していた。また、全身でのインスリン抵抗性も軽減していた。こうした結果は、膵β細胞保護を考えた糖尿病治療としてSGLT2阻害剤の有効性をあらためて示唆するとともに、β細胞機能障害進展抑制に向けた糖尿病治療戦略の構築に貢献する可能性も有すると考えられる。27ス-7:血管内皮におけるPDK1の糖代謝に対する役割の解明研究代表者:小畑 淳史(糖尿病・代謝・内分泌内科学) Phosphoinositide-dependent protein kinase 1(PDK1)は、insulin receptor-PI3 kinaseの下流にあり、血管内皮細胞の増殖や生体での血管拡張作用を調節している。我々のグループは、血管内皮細胞特異的PDK1欠損マウス(Tie2-Cre/ PDK1-floxマウス)(以下VEPDK1KO マウス)が内臓脂肪内血管新生および脂肪細胞肥大を抑制することにより、通常食6ヶ月および、高脂肪食3ヶ月負荷時に体重減少やインスリン抵抗性改善を呈することを報告してきた。一方で、2型糖尿病モデルマウスであるdb/dbマウスと正常耐糖能であるdb/mマウスの大動脈血管内皮初代培養細胞において、PDK1は、蛋白量及びその機能を活性化するp- PDK1(Ser241)がともにdb/dbマウスにおいて低下していた。そこで、ストレプトゾトシンをVEPDK1KOマウスに投与して高血糖を誘発すると、興味深いことにVEPDK1KOマウスのインスリン抵抗性は増悪し、骨格筋におけるeNOS の発現の低下に伴い、骨格筋の毛細血管血流量減少、PGC1αの発現低下が惹起され、PGC1αの下流にあるmitochondrial biogenesisに関するNRF1、 NRF2、Tfam、PPARα、ERRα等の遺伝子発現が低下し、骨格筋でのミトコンドリア含有量、β酸化の低下を伴って、骨格筋TG含量が増加していた。骨格筋免疫染色でもTUNEL陽性血管内皮細胞は有意にVEPDK1KOマウスで増加し、血管内皮細胞量が減少していた。また、HUAECを用いてPDK1をノックダウンすると、高グルコース下でCaspase3の発現が亢進し、免疫染色の結論を裏付ける結果となった。このように毛細血管血流減少によるcapillary recruitmentの低下、及びmitochondrial biogenesisの低下に伴って、骨格筋におけるインスリン抵抗性が惹起されることを明らかにした。S46川 崎 医 学 会 誌

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