医学会誌42-補遺号
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27ス-8:転写因子Nrf2はスタチンによる肝障害に対する防御機構として機能する 研究代表者:庵谷 千恵子(腎臓・高血圧内科学) スタチンの研究では、スタチンの持つ抗酸化作用、抗炎症作用、免疫修飾作用などの多彩多面的効果の研究が数多くなされている。しかし、スタチンの副作用に関する基礎研究は極めて少ない。スタチンの肝障害は、重篤ではないものの、頻度は比較的高い。肝障害機序が解明できれば、予防方法の方策が立てられる。「転写因子Nrf2活性低下はスタチンによる肝障害を惹起する」との仮説を立て、本仮説検証のため、Nrf2遺伝子欠損マウスにスタチンを投与し、肝機能障害の程度と解毒酵素群発現変化を検討した。8W齢雄性Akitaマウス、Nrf2遺伝子欠損マウス、Nrf2遺伝子欠損/Akitaマウスおよび、野生型マウスを用いた。無処置群、Atorvastatin (10mg/kg/day) 投与群、Rosuvastatin (10mg/kg/day) 投与群で比較した。スタチンは毎日経口投与し、投与1週間で検討した。Atorvastatin投与群で5匹中1匹が、Rosuvastatin投与群でも5匹中2匹が死亡した。いずれも著明な肝障害を生じていた。主に肝臓のCYP3A4で代謝されるAtorvastatinのみでなく、肝代謝を受けないRosuvastatinでも肝障害が生じた。Nrf2活性化による第II相解毒代謝酵素誘導は、スタチンによる肝障害には関与していないことが推測された。27基-42:エンドカンの糖尿病性腎症病態形成における意義の解析研究代表者:佐藤 稔(腎臓・高血圧内科学) エンドカン (Endocan) は糖タンパク質複合体のデルマタン硫酸プロテオグリカン (分子量50kDa) である。構造的には16個のアミノ酸からなるコア蛋白に1本鎖のグリコサミノグリカン鎖が結合している。Endocanは炎症部位に集積してくる白血球の浸潤を抑制する働きがあるとの報告がある一方で、腫瘍の血管新生を促進する働きがあるとの報告もある。In vitroでは、Endocan単独では内皮細胞機能に影響を与えないが、VEGFやHGFとの併存状態下では、その生物学的利用能を増強する働きがあることが報告されている。慢性腎臓病患者の血中では、このEndocanが増加していることが報告された。また、Endocanの増加は、慢性腎臓病患者の心血管イベント発症と相関することも報告されている。しかし、Endocan自体の、腎疾患病態形成における役割は明らかではない。今回、Endocanの発現調節因子を明らかとする目的で、ヒト糸球体内皮細胞 (hGEnC) に、各種の刺激を与え、Endocanの発現変化を検討した。5-8継代のhGEnCを用いた。24時間serum starvation後、①低酸素刺激 (1%O2 Hypoxia, 24hr)、②高糖濃度刺激 (25 mM D-glucose, 24hr)、③Angiotensin II刺激 (10-10~10-6M Angiotensin II, 24hr)、④SGC inhibitor刺激 (10μM LY83583, 24hr)、⑤PKG inhibitor刺激 (500 nM KT5823, 24hr)、⑥Proteasome inhibitor刺激 (50 nM MG-132, 24hr)を行った。結果、唯一、Hypoxia刺激でのみEndocan mRNA発現が増加していた。Hypoxiaで発現増加するVEGFがEndocan発現に関与しているかを、1~10 ng/mL VEGF刺激で検討したところ、VEGFにてEndocan発現が増加していた。糖尿病性腎症の進展にVEGFは重要な増殖因子であり、Endocanとの相互作用で、腎症の病変形性に関与している可能性が考えられる。S45
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