医学会誌42-補遺号
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27基-40:食道運動と下部食道括約筋機能における迷走神経温存術の有用性とそのメカニズムの解明研究代表者:村上 陽昭(消化器外科学)【背景・目的】当科では術後愁訴の軽減を目的に早期胃癌症例に対して、迷走神経温存-下部食道括約筋(LES)温存胃全摘を行っている。術後施行した食道内圧検査では非温存手術に比べて、LES機構が温存されると共に食道蠕動能が維持されていることがわかった。しかしながら、そのメカニズムは明らかにされていない。ラットにおける食道運動、LESにおける研究はin vitroの研究では多くの報告例があるが、in vivoの研究報告例は極めて少なく、食道運動は、咀嚼、嚥下と密接に関係しており、食道蠕動、LES機能評価にはin vivoの研究が必要となる。本研究の目的はin vivoにおけるラットのLESの評価方法の確立を図ることである。【方法】1)ラットを全身麻酔下に開腹した後に、経口的にバルーンカテーテルを挿入し、LESに留置し、LESの圧波形を測定する。頸部皮膚切開後、咽頭を刺激し、LES圧を測定する。2)同様に開腹後に胃前庭部、LESに電極を縫着し、胃、食道の電気的活動を測定する。【結果】1) 麻酔下ラットのLES圧波形とともに、咽頭刺激により、LES圧の弛緩が確認できた。2)胃の電気的活動を測定できた。咽頭刺激を施行時にLES圧波形とLESの電気的活動のリンクは確認できなかった。【課題】ラットのLES圧の測定は可能であるが、電気的活動の測定は困難であり、その測定方法の改善が必要である。27基-107: 胃食道逆流症(GERD)有症状の維持血液透析患者におけるエソメプラゾール4週治療によるGERD疾患関連QOL変化についての検討研究代表者:依光 大祐(腎臓・高血圧内科学) 血液透析患者では、嚥下困難、胸やけ、嘔気、嘔吐、腹痛といった上部消化管運動異常にもとづくと考えられる多彩な症状が認められる。胃食道接合部病変の有無にかかわらず逆流症状を有する病態を胃食道逆流症(GERD)呼ぶが、血液透析患者のGERD有病率は日本では検討されていない。胃食道逆流症を有する血液透析患者においてプロトンポンプ阻害剤の影響についての報告は殆どない。今回、血液透析患者を対象に胃食道逆流症症状の有病率やQOLにおいてプロトンポンプ阻害剤エソメプラゾールの影響を検討した。2012年10月から2014年3月までに10施設の患者に対してアンケート調査による断面/コホート研究を行った。Global Overall Symptom (GOS) アンケートにて、385人中41人(11%)の患者で胃食道逆流症症状を認めた。GERD症状を有する患者はthe Quality of Life in Reflux and Dyspepsia, Japanese version(QOLRAD-J)を記入し、4週間のエソメプラゾール(20 mg /日)の治療を受けた。このPPI治療によりQOLRAD-J内の所見やGOSアンケートに記載された症状は改善した。透析患者においてエソメプラゾールがGERD症状の改善に効果的であった。― 消化器・代謝 ―S41

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