医学会誌42-補遺号
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27基-43:腹膜線維化における酸化ストレス依存的Wntシグナル伝達制御機構の解明研究代表者:佐々木 環(腎臓・高血圧内科学)【目的】「腹膜中皮細胞のWnt/β-cateninシグナル活性化に対する酸化ストレス制御は線維化進展に対する新たな治療法開発の標的となる」との仮説を検証した。【方法】Wnt制御下にβ-galactosidase遺伝子を発現するWntレポーターマウスを用いた。マウス腹腔内にカテーテルを挿入し、生理食塩水投与群 (Cont)、4.25%ブドウ糖含有PD液投与群 (PD) を設定し、連日注液を行った。一部のマウスにはWnt阻害薬 (パモ酸ピルビニウム) を同時に腹腔内投与した。4週間の投与後に屠殺し、腹膜組織を検討した。【結果】PD群で腹膜肥厚及び線維化を認め、腹膜中皮細胞に一致してWnt活性化(β-gal活性)していた。PD群の腹膜組織でI、III型collagen α-SMAと、β-catenin及びβ-catenin標的遺伝子 (Cyclin D1、C-Myc) の発現増加を認めた。Wnt阻害薬投与によって腹膜肥厚、線維化抑制は有意に抑制された。【結論】ブドウ糖負荷モデル(酸化ストレス)によりWnt/β-cateninシグナル活性化後の遺伝子発現変化とG2/M期誘導細胞の線維化促進因子発現変化を確認した。腹膜中皮細胞においてWnt/β-catenin経路が活性化し、TGF-βの増加等を介して腹膜線維化を促進する。この系は、PD療法における腹膜線維化抑制の有望な治療標的となりえる。27基-105: 岡山県下における透析導入患者の心血管イベント、バスキュラ・アクセス不全の前向き観察研究 研究代表者:春名 克祐(腎臓・高血圧内科学) 本邦における維持透析患者数は30万人を超え、その数は年々増加の一途をたどっている。しかし、維持透析患者の死亡原因の約4割が心血管イベントによるものである。そのため、維持透析導入早期の心血管イベント発症を詳細に調査することにより、その実態を把握し、透析患者の治療に資することが期待される。 岡山県内においては、現在4,546名の維持透析患者がおり、新規導入は年間500名以上である。しかしながらこれまで詳細な調査が行われたことはなかった。 本研究の目的は、岡山県内の25施設で新規に透析導入を行った患者を追跡調査することにより、維持血液透析導入前の腎不全保存期および導入時における管理状況と、導入早期における死亡、心血管イベント、バスキュラーアクセス不全発症との関連について検討することである。また、維持透析患者の重要な問題として、バスキュラーアクセスの管理が挙げられ、バスキュラーアクセスの長期開存、良好な透析効率が維持透析患者の生命予後にも関連するとの報告もある。本研究により得られた知見を、腎不全保存期および血液透析導入時の管理に反映させることができれば、維持血液透析期における予後改善につながるものと期待される。今回追跡調査開始後3年の経過報告を行う。S39
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