医学会誌42-補遺号
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27基-67:BMPタンパク質の翻訳後調節を介した細胞分化の制御機構 研究代表者:西松 伸一郎(分子生物学)【目的】BMPは、TGF-βファミリーのサイトカインで、前駆体タンパク質として合成された後、プロセシング酵素による切断を経て活性型タンパク質となる。この反応がBMPタンパク質産生細胞を特定の細胞へ自律分化させるスイッチとなっている可能性を発見した。前駆体を切断するタイミングが、細胞周期の長さを調節し、細胞分化を制御しているのではないかと考えている。本研究では、BMP前駆体のプロセシング酵素を骨格筋特異的に欠損したマウスより、骨格筋衛星細胞を単離し、細胞分化の相違を解析した。【方法】骨格筋衛星細胞は、前頸骨筋より単離した。増殖培地で培養した後、分化培地に交換し48時間後に観察した。筋分化を制御する転写因子ならびに終分化マーカーであるTroponin-T、ミオシン重鎖タンパク質の発現量を比較した。【結果・考察】BMP前駆体のプロセシング酵素PC6を骨格筋特異的に欠損した変異マウスより骨格筋衛星細胞を単離し分化培地に交換したところ、変異マウス由来の筋衛星細胞では Troponin -Tの発現が低下し、筋分化が抑制されることがわかった。またPC6と同じファミリーのFurinを欠損したマウスにおいても同様に筋分化が抑制されることを明らかとした。プロセシング酵素の発現低下により筋分化そのものが阻害されたのか、筋分化の速度が低下したのか、Fucciマウスを導入し詳細な解析を行っていく。27基-29: Lineage reprogramming戦略による筋ジストロフィー細胞療法の基盤研究研究代表者:大澤 裕(神経内科学) 胎児線維芽細胞(MEF)への3つの転写因子の発現によって人工多能性幹(iPS)細胞が樹立され、これを細胞ソースとして様々な体細胞へ分化させる再生医療が盛んである。ところが“多能性リプログラミング”に起因する癌化や誤分化の課題は依然として克服されていない。一方、一旦分化した体細胞を別の体細胞に直接リプログラミングさせる戦略も注目されているが、その機構は殆ど解明されていない。われわれは野生型及び筋分化転写因子のひとつであるXを欠損したマウスからそれぞれMEFを採取し転写因子“X”、及び“Y”、“Z”を導入し、筋細胞への直接リプログラミングの可否を、それぞれ検討した。野生型ばかりでなくX欠損マウスのMEFも、それぞれ単核の線維芽細胞から多核筋管細胞・筋線維様となりに収縮を始めた。この野生型線維芽細胞のリプログラミングでは、X、Y、Zが、経過とともに発現した。同様にX欠損線維芽細胞の直接リプログラミングでは、Y、Zが経過とともに発現した。細胞を野生型マウスに移植すると筋線維に取り込まれ一部は筋組織幹(衛星)細胞マーカーを発現した。すなわち、線維芽細胞から筋細胞への直接リプログラミングではY、ZがXより上流で制御して、筋組織幹細胞へ分化する階層が存在する。この直接リプログラミング戦略とヒト人工染色体を用いた遺伝子修復との組み合わせ治療について紹介する。S31

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