医学会誌42-補遺号
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27基-72:脳梗塞後のリハビリテーションにより引き起こされる神経回路変化の解析研究代表者:岡部 直彦(生理学2) 脳梗塞により神経細胞死がおこると、神経ネットワークに障害がおこり、その結果として麻痺などの機能障害が起こる。この機能障害がリハビリテーションにより回復する際には神経細胞が軸索や樹状突起、シナプスといった機能構造を変化させ、神経回路を再構成することがわかっている。本研究では脳梗塞後のリハビリテーションにより機能回復が起こる際、どのようにして神経回路が再編成されるのかを生理学的および解剖学的手法を用いて調べた。脳梗塞によりラットの一次運動野であるCFA領域を破壊すると、時間依存的およびリハビリテーション依存的に二次運動野であるRFA領域が拡大することが分かった。RFA領域から脊髄への神経回路である皮質脊髄路を調べると、リハビリテーションは尾側頸髄において背索中の軸索本数および灰白質中の軸索長を増加させることが分かった。さらに、吻側頸髄と尾側頸髄に異なる色の逆行性トレーサーを注入し脊髄へ投射する神経細胞の数を調べたところ、リハビリテーションはRFA領域から尾側頸髄へ投射する神経細胞の数を増加させることが明らかとなった。また、リハビリテーションはRFA領域から吻側頸髄と尾側頸髄の両方へ投射する神経細胞の数も増加させることがわかった。 これらの結果は、リハビリテーションが脳梗塞前は吻側頸髄に投射していた神経細胞の軸索を進展させ、尾側頸髄への神経回路を新たに形成したことを示していると考えられた。27基-70:海馬BDNF濃度に着目した運動による脳梗塞後の認知機能低下予防効果の検証研究代表者:氷見 直之(生理学2)【背景】習慣的な有酸素運動が予防医学的に有益であることは様々な疾患において言われている。【目的】運動習慣が脳梗塞後の認知機能障害を防止することを動物モデルにおいて実証し、そのメカニズムが運動による脳由来神経栄養因子(BDNF)の海馬内濃度の上昇に起因することを示すことを目的とした。【方法】脳梗塞モデルとして、内頸動脈よりマイクロスフェア(MS)を注入したラットを用いた。トレッドミルで7日間運動(30 min/D、15 m/min)を課したラット(Ex群)と、運動を行わないNE群に対し、運動終了24時間後(Ex群)にMS注入を行い、8日後にモリス水迷路試験にて認知機能障害の1要素である空間記憶能を測定した。さらに、運動前、運動開始4、7日後およびMS注入4、7日後において摘出した海馬組織の抽出液中のBDNF濃度をELISAにて測定した。【結果】MS注入ラットの空間記憶能は疑手術群と比較して有意に低下したが、Ex群はNE群に比べて有意に空間記憶能が回復した。海馬BDNFは7日間の運動後および脳梗塞発症4日後において運動前の値と比較して有意に高い濃度であり、梗塞発症直後の海馬ニューロンの保護に寄与したものと考察される。【結論】本結果は、日常の運動習慣が海馬のBDNF濃度を高く維持し、脳梗塞発症後のニューロンを保護するため記憶障害が抑制されることを示唆している。S29

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