医学会誌42-補遺号
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27基-86: Symptomatic uncomplicated diverticular disease (SUD)の病態 -消化管知覚および消化管粘膜微細炎症の関与-研究代表者:眞部 紀明(検査診断学(内視鏡・超音波))【背景】本邦では大腸憩室症は比較的まれな疾患とされていたが、生活様式の欧米化や高齢化社会の到来に伴いその罹患数が増加している。しかしながら、その臨床経過については不明な点が多い。【目的】大腸憩室炎の再燃率およびその危険因子について検討する。【方法】内科的治療で治癒した大腸憩室炎73例を対象に、再発率、合併症の出現率、およびその危険因子を検討した。【結果】平均観察期間2.2年間で、19例(26.0%)に再燃が見られた。75%は、再燃回数が2回以下であったが、25%は3回以上であった。初回発症時の合併症(膿瘍形成)の有無で再発率を比較したが、2群間には差を認めなかった。次に、再燃を繰り返す憩室炎と繰り返さない憩室炎で患者背景を比較したところ、再燃を繰り返す憩室炎は、持続性腹痛が有意に多かった。【結論】本邦の大腸憩室炎の再発率は欧米のそれと同等であった。初回憩室炎発症時の合併症の有無はその後の再発率には影響なく、再発症例の唯一の特徴は持続性腹痛であった。【今後の課題】再発症例の大腸粘膜生検のTRPV1-immunoreactive nerve ber,SP,neuronal marker protein gene product (PGP) 9.5-expressing nerve bers,mast cells,lymphocytesを免疫染色により定量化し、微細炎症、知覚過敏との関連を検討する。27基-82: 非小細胞肺癌細胞におけるHERシグナルを介したNK細胞活性化リガンドMICA/BならびにT細胞抑制リガンドPD-L1発現機構の解明研究代表者:沖田 理貴(呼吸器外科学)【背景】癌に対するHERシグナル標的薬剤の作用について、抗腫瘍免疫を視点とした報告は少ない。【方法】当科で根治手術を施行された91例のStage IA-IIIA期非小細胞肺癌患者の切除標本を用いて、免疫組織学的反応(IHC)によりNKG2Dリガンドである MICA/B, ULBPならびにPD1リガンドであるPD-L1を解析し、臨床病理学的因子との関連について検討を行った。また、非小細胞肺癌細胞株を用いて、EGFRシグナル活性化、不活化がNKG2DリガンドMICA/B, ULBP-2/5/6とPD-L1の発現量に与える影響についてフローサイトメトリー法を用いて解析した。【結果】MICA/Bは31%の症例で、ULBP-2/5/6は46%の症例で強発現を認められた。MICA/B強発現は無再発生存期間において予後良好であったが(p=0.037)、ULBP-2/5/6発現の有無は予後に影響しなかった。PD-L1については14.3%の症例で強発現を認められ、PD-L1強発現の症例は無再発生存期間において予後不良であった(p=0.012)。細胞株を用いた検討では、NKG2Dリガンド、PD-L1発現は、それぞれEGFRシグナル阻害剤で低下した。【結論】非小細胞肺癌においてMICA/B強発現は予後良好、PD-L1強発現は予後不良因子であった。また、それぞれの発現制御機構の一端が明らかとなった。S22川 崎 医 学 会 誌

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