医学会誌42-補遺号
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27基-38:骨髄異形成症候群におけるDNAメチル化阻害薬の作用機序の解明研究代表者:辻岡 貴之(検査診断学(病態解析))【目的】DNAメチル化阻害薬は骨髄異形成症候群(MDS)の治療薬として、 近年注目されているが、作用機序に不明な点が多いためin vitroの系を用いて検討した。【材料と方法】MDS細胞株MDS-L、MDS92と白血病細胞株HL-60を37℃、CO2 5%の条件下で培養した。DNAメチル化阻害薬(decitabine;DAC、azacitidine: AZA)を1nM-10 microMで連日処理した。【結果】3つの細胞株に対して増殖抑制がみられ(DAC:IC50はMDS-L: 16.0±0.49nM、MDS92: 74.3 ±12.6nM、HL-60: 145.0 ±6.1nM)、アポトーシスによる細胞死が確認された。細胞周期の解析では、 MDS-LをDACで処理したとき、 濃度依存性にG2/M期の細胞が増加した。DNAマイクロアレイと全ゲノムを対象とした網羅的メチル化解析を行いDACの作用機序に関わると予想される13個の遺伝子を抽出し特に、cholesterol 25-hydroxylase(CH25H)に注目した。定量PCRを用いてCH25H の発現量を確認したところ、 3つの細胞株でDAC処理により発現の上昇を認めた。MDS-L、HL-60を用いたCH25H プロモーター領域のメチル化解析では骨髄健常人CD34陽性細胞と比較して顕著なメチル化を認めた。【考察】 現在、 MDS・白血病患者骨髄検体を用いて細胞株の結果を検証中である。27大-6:薬剤溶出性ステント留置後のステント血栓症における血小板機能の影響研究代表者:上村 史朗、福原 健三(循環器内科学)【背景】近年、薬剤溶出性ステント(DES)留置後のステント血栓症や心筋梗塞とクロピドグレル耐性との関連が報告されている。【目的】DES留置後のステント内血栓とクロピドグレル耐性との関連を明らかにすること。【方法】DES留置後遠隔期にフォローアップ目的で光干渉断層法(OCT)をおこなった109症例、202病変を対象とした。フォローアップ期間の中央値は202日であった。冠動脈造影施行時にOCTによるステント留置部の観察を行い血栓の有無を評価した。同日にVerifyNow® systemを用いた血小板機能検査を施行し、P2Y12 reaction unit (PRU) ≧ 230の例をクロピドグレル耐性 (High platelet reactivity=HPR)例とした。ステント内血栓の頻度をHPR例と非HPR例との間で比較検討した。【結果】HPR例は109例中35例(32%)に認められた。HPR例は高齢で、男性が少なく、高血圧、急性冠症候群の頻度が多かった。OCTではHPR例と非HPR例の間に内腔、ステント、新生内膜の各断面積には差を認めなかった。ステント内血栓はHPR例で有意に多かった (20% vs. 4%,P<0.01)。【総括】クロピドグレル耐性例ではステント内血栓が多かった。この事は、クロピドグレル耐性例にステント血栓症や心筋梗塞が多い事の説明となる可能性がある。― 病態と治療 ―S21

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