医学会誌42-補遺号
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27基-9: HTLV-1関連疾患におけるHBZ蛋白による病態形成機序解明と新規発症予防法・治療法の開発 研究代表者:塩浜 康雄(微生物学)【目的】成人T細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)のマイナス鎖にコードされるHBZは、発がん(成人T細胞白血病:ATL)・慢性炎症(HTLV-1関連脊髄症:HAM)双方の原因遺伝子であるが、従来は優れた抗体が存在しなかったため、HBZ蛋白発現と病態との関連は不明であった。本研究では、抗HBZ単クローン抗体を作製してHTLV-1感染者末梢血単核球(PBMC)中のHBZ蛋白量及び血漿中抗HBZ抗体価を定量し、病因的意義を明らかにする。【方法】合計13種類の抗HBZ単クローン抗体を作製し、ATL患者、HAM患者、無症候性キャリアー(AC)PBMC中のHBZ蛋白量及び血漿中抗HBZ抗体価を定量してHBZ mRNA発現量との関連を解析した。【結果】急性型ATL(n=5)3検体でHBZ蛋白の発現が検出可能であったが、HAM(n=10)およびAC(n=4)では検出できなかった。血漿中HBZ抗体は一部の検体でのみ陽性であった(ATL 16.7%,HAM 10.8%,AC 10.4%)。PBMC中HBZ mRNA発現量とHBZ蛋白発現量、血漿中抗HBZ抗体価との間に有意な相関を認めなかった。【考察】HBZ蛋白質の生体内における発現量と免疫原性は極めて低く、mRNA発現量との相関がないことを明らかにした。HBZ蛋白発現と急性型ATL発症との関連については、さらなる検討が必要である。S20川 崎 医 学 会 誌

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