医学会誌42-補遺号
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研究課題名:接触過敏症動物実験系を用いた大豆のアレルギー性接触皮膚炎抑制効果研究代表者:長野 隆男(川崎医療福祉大学 医療技術学部臨床栄養学科) 大豆には、イソフラボン(SI)やサポニン(SS)といった生理活性物質が多く含まれることから、骨粗鬆症、がん、高コレステロール血症等の様々な疾患に対する効果が知られている。一方、低分子の化学物質がアレルギー性の皮膚炎を起こすことが知られており、この皮膚炎はアレルギー性接触皮膚炎(ACD)と呼ばれる。マウスを用いた接触過敏症(CHS)動物実験系は、ACDのよいモデル動物実験系と考えられている。本研究では、CHS動物実験系を用いて、1)大豆及びSIのCHS抑制効果、2)SSのCHS抑制効果を研究した。1)大豆及びSIのCHS抑制効果:大豆摂取群とSI摂取群で、耳介と耳介組織の腫れ、Gr-1陽性細胞の耳介組織への浸潤、耳介でのCCL24のmRNAとタンパク質の発現が抑制された。これらの結果から、大豆及びSIの摂取により好酸球を動員するCCL24が抑制され、CHSが抑制されると考えられた。2)SSのCHS抑制効果:SS摂取群で、耳介と耳介組織の腫れ、Gr-1陽性細胞の耳介組織への浸潤、耳介でのCXCL2とTREM-1の発現が抑制された。腸内細菌叢についてクラスター解析を行った結果、非CHS群とCHS群は異なるグループに分かれ、SS摂取群は非CHS群と同じグループに分類された。これらの結果から、SS摂取はCHSによる腸内細菌叢の変化を抑制し、好中球を動員するCXCL2と炎症性ケモカインであるTREM-1が抑制されることから、CHSが抑制されると考えられた。 以上の結果、大豆製品を日常摂取することでACDの緩和効果が期待できることが示唆された。研究課題名:抗マラリア作用を有する新規化合物の合成と探索研究研究代表者:町支 臣成(福山大学 薬学部) 地球温暖化による感染地域の拡大や既存の抗マラリア薬であるクロロキンなどに強い耐性を示すマラリア原虫の急速な拡散により、マラリアが再興感染症として問題となっている。このような背景の中で、薬剤耐性を克服するより強力な抗マラリア薬の開発が望まれている。 Calothrixin A及びBは、1999年にCalothrix cyanobacteriaから単離されたインドロフェナンスリジンアルカロイドであり、高い抗腫瘍活性と抗マラリア活性を示すことが報告されている。そのため、その生物活性と特異的な構造から、世界中の研究者によって、その合成法の開発が行われている。しかし、calothrixin類の抗マラリア活性に関する活性評価を実施した報告はほとんどない。そこで、calothrixin類の独自の合成法の開発とその方法を活用した誘導体合成を行い、既存薬と化学構造や作用機序の全く異なる新たな医薬素材の探索研究を実施した。 当研究室の研究テーマの1つである熱電子環状反応を鍵反応として活用したcalothrixin類の効率的な合成法の開発を検討し確立することができた。 そして、そのN-アルキル誘導体を8種合成しクロロキン耐性マラリア原虫に対するin vitro評価試験を実施した。― 大学間研究の端緒を開く ―S16川 崎 医 学 会 誌

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