医学会誌42-補遺号
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26特-3:免疫抑制解除型新世代XAGE-1b長鎖複合ペプチドワクチン肺癌ワクチンの基盤研究代表者:岡 三喜男(呼吸器内科学) 近年、悪性黒色腫を先導に肺癌でも抗体免疫療法の道が開かれたがその効果は未だ限定的であり、肺癌でも強力な免疫誘導効果をもたらす治療法の開発が必要である。 我々は、肺癌のうち最も頻度の高い肺腺癌に発現するXAGE1抗原に注目し肺癌患者における宿主免疫応答を解析してきた。これまでの解析で、XAGE1は非常に免疫原性の強いがん・精巣抗原であることを明らかにした。さらにXAGE1に対する抗体反応を免疫バイオマーカーとして用い、肺腺癌の自然経過を前向き研究により観察し、抗体反応陽性患者は予後が延長することを明らかにした。 また、肺癌の局所においては抗腫瘍免疫を抑制する制御性T細胞の重要性を明らかにし、平成24年度厚生労働科学研究費補助金により、制御性T細胞を除去することで抗腫瘍免疫を賦活する医師主導治験を実施した。これらの成果は、川崎医科大学から、日本から、世界へ発信する画期的なデータとなった。 さらに、肺癌局所における免疫抑制機構として、PD-1/PD-L1経路のみならず、TIM-3/Galectin-9経路が重要であることが判明し,免疫チェックポイント分子のPD-L1、Galectin-9および、XAGE1の腫瘍における発現と、腫瘍浸潤リンパ球の多寡を指標することで、早期肺癌患者の予後が明確に判別できることも明らかとなった。 本研究によって、XAGE1抗原の強い免疫原性をがんワクチンとして用い、局所における宿主免疫応答の抑制を解除する抗体医薬等と併用し、世界初、日本発の免疫調節薬による肺がん治療の推進を行う。26特-1: TGF -β阻害戦略による抗加齢・健康寿命延伸医療の創出研究代表者:砂田 芳秀(神経内科学) マイオスタチンは骨格筋量を負に体脂肪量を正に制御するユニークなTGF-β分子で、われわれはマイオスタチン活性亢進による筋ジストロフィーの筋萎縮機構を明らかとした(J Clin Inv 161, 2006)。本研究は、加齢をマイオスタチン/TGF-βの恒常性破綻病態と捉え、その阻害による医薬品の開発に取り組んでいる。平成26年度は独自アッセイによりマイオスタチンリガンドを血中で生理的に阻害するプロドメインから、その阻害活性中心(IC:29アミノ酸残基)を同定しPCT出願を行った。平成27年度はこのICが、Random coil (RC), α-helix (AH),Latento lasso(LL)の3構造からなり、Ⅰ型受容体、リガンド、Ⅱ型受容体と結合して筋細胞表面でリガンド-受容体結合を特異的に阻害するという革新的な分子機構を発見し論文を発表した(Ohsawa,Plos One10,e0133713)。また、TGF-βに対する低分子阻害化合物を、筋ジストロフィー及び老化モデルマウスに経口投与した。筋ジスマウスでは筋萎縮と筋張力低下は改善し壊死・再生・線維化・脂肪化など“ジストロフィー変化”も軽減した。サルコペニアマウスでは筋萎縮、腎硬化症と骨粗鬆症が改善し、寿命が延長した。国民の健康寿命を延伸するため、マイオスタチン/TGF-βを標的とした新規医薬を本学から発信したい。S15

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