医学会誌42-補遺号
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27特-1:肝細胞癌標的治療薬としてのDPP-4阻害剤の分子生物学的解析 研究代表者:仁科 惣治(肝胆膵内科学)【目的】CD26はDipeptidyl peptidase 4(DPP4)とも言われる。我々は肝細胞癌(HCC)進展とCD26との関連性およびDPP4阻害薬(anagliptin)による抗腫瘍効果を検討した。【方法】根治的肝切除術を受けたHCC患者41例を対象に、切除肝癌組織標本におけるCD26染色強度とHCC進展との関連性を検討した。CD26発現肝癌細胞(Huh-7) に対しanagliptinを添加し、細胞増殖に及ぼす影響を検討した。BALBc-nu/nuに対しHuh-7細胞を皮下移植し、腫瘍発生後にMF食(コントロール)およびanagliptin 添加MF食を経口投与し、抗腫瘍効果を検討した。【結果】ヒトHCC組織においてCD26高発現群は低発現群と比べ、中低分化度・stage進行症例が有意に多く、細胞増殖能や血管新生が亢進していた。また、anagliptin はHuh7細胞に対し細胞増殖能への影響を認めなかった。さらに、anagliptin添加MF群はコントロール群と比べ、NK細胞走化性亢進および血管新生抑制作用を伴い、有意な腫瘍増大抑制を認めた。【結語】ヒトHCCにおけるCD26高発現は病態進展に関連していた。anagliptin は肝癌細胞に対する直接的な抗腫瘍効果は認めなかったものの、in vivo において肝癌細胞へのNK細胞走化性亢進作用等を介した抗腫瘍効果を及ぼすと考えられた。26特-2:インスリン抵抗性宿主における大腸発がんメカニズムの解析研究代表者:鶴田 淳(消化器外科学)【背景】TIGAR(TP53-induced glycolysis and apoptosis regulator)は解糖を抑制しペントースリン酸経路(PPP)を活性化し癌細胞の代謝性要求に応えるp53下流分子である。Warburg効果との関連は不明だがPPPへの効果の点では同じである。【目的】インスリン抵抗性発がんにおけるTIGARの役割を検証する。【方法】In vitro:ヒト大腸癌細胞株(HT29、HCT116、HCT116 p53-/-、Caco-2、DLD-1)にて低濃度インスリン(20nM)の長期間刺激下(4、8、12週間)でのTIGAR、Aktの発現を検証した。In vivo:5週齢雌C57BL/6(対象群)、2型糖尿病モデルKK-Ay(試験群)に普通食群(BD)、高脂肪食群(HFD)を与えた4群にてTIGARの臓器特異性を解析した(21週齢で犠牲死)。【結果】In vitro:慢性的インスリン暴露(Chronic Insulin Exposure:CIE)下でDLD-1におけるWestern blot(WB)にてTIGAR/β-actin比(0h=1)は、4w: 1.73±0.40、8w: 2.55±1.15、12w: 6.06±2.35 (12w: p=0.02, t-test)であり、またAkt/β-actin比(0h=1)は、4w: 1.72±0/17、8w: 1.56±0.50、12w: 3.32±0.48 (12w: p=0.001)であった。高インスリン血症下でのヒト結腸癌細胞におけるTIGARの高発現を認めた。In vivo:糖負荷試験、インスリン負荷試験においてHFD負荷KK-AyはBD負荷KK-Ayに比べ、より強いインスリン抵抗性を示した。またHFD負荷KK-Ayにおける膵β細胞の免疫組織染色においてp53非依存性TIGARタンパクの高発現を認めた。同組織におけるWBではTIGAR/β-actin比はBD群0.50、HFD群0.81であった(p=0.07)。【結語】In vitro、In vivoともに高インスリン状態下におけるTIGARの高発現を認めた。今後TIGAR KOマウスを用いてのインスリン抵抗性獲得モデルの作成等を行い検証する予定である。― 特別推進研究 ―S14川 崎 医 学 会 誌

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