医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-11: フリッカー網膜電位計(RETeval™)を用いた虚血性眼疾患における眼内血管新生の予測に関する研究研究代表者:水川 憲一(眼科学1)【目的】フリッカー網膜電図(fERG)の頂点潜時が網膜中心静脈閉塞症(CRVO)における眼内血管新生の予測に有用であることが報告されている。新たに開発されたRETeval™は従来のERG記録装置と異なり、非侵襲的かつ迅速にfERGを記録可能な装置である。今回、網膜静脈閉塞症(RVO)においてRETeval™で記録した頂点潜時について検討したので報告する。【対象および方法】対象は片眼性RVO症例43例。内訳はCRVO:22例、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)21例に対しRETeval™でfERGを記録し、得られた頂点潜時について検討した。【結果】従来の報告と同様に、RETeval™で記録したfERGでもCRVO、BRVOともに健眼に比して患眼では頂点潜時の延長が認められた(P<0.0001: Wilcoxon signed-ranks test)。しかし予想に反して虚血の程度が異なるCRVOとBRVO間で頂点潜時に差はみられなかった(P=0.1034: Mann-Whitney’s U test)。【結論】従来の報告と同様にRETeval™で測定したfERGの頂点潜時も虚血眼では有意に延長していた。RETeval™はRVO症例での眼内血管新生予測に有用なツールとなり得るが、虚血の程度が異なる病型間で頂点潜時に差がみられなかった原因を今後検討する必要がある。26基-40:脈波伝播速度と新規血管内皮機能検査、免疫学的手法を用いた革新的脳卒中診療の開発研究代表者:佐治 直樹(脳卒中医学) 本研究の目的は、ラクナ梗塞や白質病変などの無症候性脳病変や脳血管障害の病態について、免疫学的手法や血圧脈波検査を用いて多角的に検討することである。今回は、以下の解析を行った。 脳卒中未発症患者(正常群)460人、ラクナ梗塞患者280人、アテローム血栓性脳梗塞患者102人を対象に血圧脈波検査を実施した。血圧脈波検査のパラメータと臨床病型を比較し、その相関について統計学的に評価した。アテローム血栓性脳梗塞群は正常群より有意にABI低値だったが(p<0.001)、正常群とラクナ梗塞群では有意差を認めなかった。baPWVは、ラクナ梗塞群(中央値:20.8 m/s)はアテローム血栓性脳梗塞群(21.0 m/s)とほぼ同等で、いずれも正常群(17.1 m/s)より有意に高値だった(p<0.001)。 血管内皮障害の機序は、ラクナ梗塞(細動脈硬化)とアテローム血栓性脳梗塞(大血管粥状硬化症)では異なっており、血圧脈波検査や免疫学的手法を用いて、脳梗塞における動脈硬化の病態が明らかになるものと期待している。現在、免疫学的測定実験を概ね終了しており、今後は更なる解析をすすめる予定である。― 抄録集掲載のみ ―S80

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