医学会誌 第41巻 補遺号
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研究課題名:Kinectを用いたリハビリシステムの考察(身体動作と指先動作の検出)研究代表者:沖 俊任(福山大学 工学部スマートシステム学科) 医療やリハビリの現場では、非接触に人の行動をリアルタイムに計測するニーズが様々な場面にある。このニーズに対するデバイスの一つとして、2010年に発売開始されたMicrosoft社製のKinect(キネクト)があり、様々な応用研究がなされている。Kinectの代表的な機能は、距離画像から人の頭、首、肩、手首などの位置をリアルタイムに検出することである。さらに、別の画像データから、顔の表情認識や体の各部にかかっている力などが推測でき、赤外線画像データから心拍数などを計測することもできる。その他にも、内臓のマイクロフォンにより音源方向認識や音声認識を行うこともできる(1)。また、これまでのセンサに比べ安価なため、在宅療養支援システムのデバイスとしても注目されている。 Kinectのリハビリ分野への応用では、これらの機能を用い患者の身体動作を用いたゲームを利用することでモチベーションの維持や効果のフィードバックに利用する試みがなされている。しかし現在のところKinectを用いても各指の動作などの情報は容易に取得できないことから、指のリハビリへの応用は見られない。 一方、田中聡准教授(福山大学工学部スマートシステム学科)は、Kinectを用いた指先動作認識によるリモートコントローラの研究を行っており、身体動作と指先動作によるロボット制御を行っている。 本発表では、このシステムのデモンストレーション、および、Kinectの医療やリハビリへの応用を紹介する。参考:(1)http://japanese.engadget.com/2013/05/21/xbox-one-kinect-6/研究課題名:注意の瞬きにおける訓練効果-T2 検出を促進する課題の短縮版による検討-研究代表者:橋本 優花里(福山大学 人間文化学部心理学科)【目的】高速逐次視覚提示課題において,先行ターゲット(T1)の処理を求めると,その後500ms 以内に提示される後続ターゲット(T2)の処理成績が低下する現象を注意の瞬きと呼ぶ。注意の瞬きでは,脳を損傷した臨床群において瞬きの時間が遅延することが報告されている。また,健常者を対象とした研究から,瞬きの時間はT2の検出を促進する訓練より短縮することが示されているものの(Choi et al.,2012),臨床群を対象とした研究はまだない。そこで本研究では,Choi et al. (2012)の課題を臨床群に実施するため,まずはその短縮版を作成し,健常者を対象に訓練効果を検討した。【方法】高速逐次視覚提示による評価課題と訓練課題を健常者11名に実施した。評価課題ではSOA200msとSOA600msを各30試行実施し,訓練課題ではSOA200msのみを60試行実施した。【結果】評価課題のT1 正答時のT2の正答率について,各SOA条件と訓練前後の比較を行った。その結果,SOA200ms条件では,訓練後の正答率の上昇が示された。また,評価課題のT1の正答率についても同様の結果が得られた。【考察】短縮版であっても,瞬き時間の短縮が示された。しかしながら,200ms条件において訓練後のT1の正答率が上昇したため,本研究で示された瞬き時間の短縮には,T1への処理効率の向上が影響している可能性が考えられた。S78川 崎 医 学 会 誌
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