医学会誌 第41巻 補遺号
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研究課題名:ペダリング運動の制御メカニズムに関する研究研究代表者:山㟢 大河(岡山県立大学 情報工学部情報システム工学科) ヒトの運動制御では身体各部の「協調」が重要であることは古くから指摘されている.また,同じ運動を繰り返したときの運動の空間的な「ばらつき」やその「偏り」には,神経系にとっての制御量が反映されている可能性も古くから指摘されている.本研究は,運動の協調やばらつきという視点から,自転車や足こぎ車椅子でのペダリング運動の制御メカニズムの解明や,運動評価などへの応用を目指している. ⑴ヒトの歩行,走行,ホッピングなどの運動では,下肢の各セグメントが外界に対してなす角度が互いに一定の関係性を保って変化するような協調が観察され,平面法則と呼ばれている.本研究では,ペダリング運動でも,これに類似した現象の存在を示し,さらに,運動の負荷の増大に伴って,この協調が変化する特性を明らかにした. ⑵神経系が制御しようとしている変数のばらつきは,そうでない変数に比べて小さく抑えられているとの仮説に基づき,神経にとっての制御量を同定する Uncontrolled manifold(UCM)解析を,ペダリング運動に適用する手法を開発し,神経制御系の働きの評価を試みた.その結果,関節トルクや関節角速度のばらつきの解析から,神経系が,ペダル踏力のクランク接線方向成分や,足部速度のクランク接線方向成分を一定に保つ制御を行っている傾向を抽出できる可能性を示した.研究課題名: 健康成人における食後血糖およびインスリン分泌に影響を及ぼす品種米の胚乳澱粉の構造と物性に関する研究研究代表者:井ノ内 直良(福山大学 生命工学部生命栄養科学科) 糖尿病の予防や治療の基本は食事療法であり、エネルギー摂取のコントロールと同時に、食後の高血糖を適性にコントロールすることが重要である。特に、糖質含量の多い炭水化物食品については、食後血糖を急激に上昇させない、インスリン分泌をあまり刺激しない低グリセミックインデックス(GI)食が有用とされる。㈱三和化学研究所は、日本人に適した食味と低GIを兼ね備えた高アミロース米の新品種「雪の穂」の育成に成功し、すでに「スローライス」の商品名でパックご飯として市販している。一方、花王㈱ヘルスケア食品研究所は(独)農業・食品産業技術総合研究機構北陸研究センターが育成した糖質米「あゆのひかり」に注目し、コシヒカリに比べ食後の血糖が低い傾向を示し、インスリンの分泌も抑制するため、日本人の主食である米において、糖尿病の一次予防として有用な米品種であることを明らかにした。 我々の研究室は、ここ数年の間に相次いで両研究所から上記2種類の米の主成分である胚乳澱粉、フィトグリコーゲンなどの多糖成分の構造と物性に関する研究依頼を受け、両澱粉が一般の米澱粉に比べて、アミロペクチン構造が特異なこと、糊化温度が異常に低いことなど、いくつかの興味ある結果を得たので、今回、ご報告させていただきます。S77

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