医学会誌 第41巻 補遺号
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研究課題名:トキワレンゲのポリフェノール成分と機能性研究代表者:伊東 秀之(岡山県立大学 保健福祉学部栄養学科) トキワレンゲ(Magnolia coco)は、モクレン科モクレン属に分類される常緑低木であり、その花の煎液は鎮痛、婦人病に効果があるとされている。しかし、トキワレンゲの花の成分については、精油成分を除いてほとんど報告されていない。我々はα-グルコシダーゼ阻害活性成分探索の一環として、様々な植物エキスについてスクリーニングを行った結果、トキワレンゲの花のエキスに阻害活性を有することを見出した。そこで本研究では、トキワレンゲの花に含まれるα-グルコシダーゼ阻害活性成分の探索を目的として実験を行った。 トキワレンゲの花を70 %含水アセトンでホモジナイズを行い、含水アセトンエキスのHPLC分析の結果、主要成分のピークが見られたので、各種クロマトおよびTLC分取により分離を行い、4種の化合物を単離した。単離した成分について、NMR、MSなどのスペクトル解析を行い、それぞれchlorogenic acid、rutin、kobusin、および (+)-sesaminと同定した。単離した4種の化合物のα-グルコシダーゼ阻害活性については、chlorogenic acidのみ阻害活性が示された。また含水アセトンエキスの液-液抽出によって得られたn-ブタノールエキスはα-グルコシダーゼ阻害活性を示し、そのエキスを濃縮の際、沈殿が生じた。その沈殿物は、塩酸-ブタノール反応、13C-NMRスペクトル解析、フロログルシノール分解反応、さらにゲル浸潤クロマトグラフィー分析によるピークの保持時間などから、平均22量体のprocyanidin oligomerから構成されていることが示された。研究課題名:抗ロイコトリエン抗体の肺線維症治療薬としての応用を目指した研究研究代表者:高橋 吉孝(岡山県立大学 保健福祉学部栄養学科) ロイコトリエンC4(LTC4)、LTD4、LTE4は、アラキドン酸から合成される強力な炎症性脂質メディエーターであり、少なくとも3種類の受容体サブタイプとの結合を介して、気管支喘息のような急性炎症性疾患だけでなく、肺線維症のような慢性炎症性疾患の増悪に関わる。申請者らはこれまでに、抗LTC4モノクローナル抗体がLTC4あるいはD4と結合し、1 nMの低濃度で標的細胞上の2つの受容体への結合を阻害する中和抗体として働くことを見出した。また実際に、この抗体を気管支喘息モデルマウスに投与すると喘息の所見が軽快することを証明した。さらに、抗体を構成する2本のタンパクそれぞれの抗原結合部位をつないで1本にすることにより、変異の導入が自在に行える抗LTC4単鎖抗体を作製してCOS-7細胞で発現させ、これが元のモノクローナル抗体と同様に中和抗体として働くことを示した。 今回、慢性炎症性疾患の一つである肺線維症に対する効果的な治療薬を作製することを最終目的として、抗LTC4モノクローナル抗体あるいは酵母で発現させた抗LTC4単鎖抗体が、マウスの肺から単離して培養した線維芽細胞によるコラーゲン産生を抑制するかどうかを検討した結果、1 nMのLTC4によるTypeⅠコラーゲンの遺伝子(COL1A1およびCOL1A2)mRNA量レベルの上昇は、0.1 -1 nM以上の抗LTC4モノクローナル抗体、あるいは1 nM以上の抗LTC4単鎖抗体により有意に抑制された(p<0.05)。 以上より、抗LTC4単鎖抗体が肺線維芽細胞によるコラーゲン産生を抑制することが示された。― 西日本医系大学知的財産管理ネットワーク ―S75

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