医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-53:アスベスト長期曝露により誘導されるIL-10とTGFβの産生亢進のメカニズムの解析研究代表者:松崎 秀紀(衛生学) アスベストは肺がんや悪性中皮腫を誘導することが知られている。我々はアスベストが正常細胞のがん化を誘導するのみならず、制御性T細胞を介して腫瘍免疫を減弱し、がんの発生を促進することを提唱しており、これまでに制御性T細胞のモデル細胞株であるMT-2に低濃度のアスベストを長期間曝露したMT-2アスベスト長期曝露細胞株では、IL10やTGFβなどの抑制性サイトカインの産生量を増加させること見いだしている。一方、昨年度までの研究によりアスベスト長期曝露細胞では転写因子FoxP3の発現低下とGATA1の発現上昇を見いだしている。これらの転写因子は制御性T細胞の分化誘導に重要であることが報告されている。そこで、本研究では各分子のプロモーター領域を挿入したレポーターアッセイによりこれらの分子の発現調節のメカニズムを検討した。その結果、TGFβとIL10のプロモーター解析ではMT-2親細胞とアスベスト長期曝露細胞間ではレポーター分子の発現量に差は見られず、これらの分子の発現制御には上流の転写因子とは異なる経路を介して発現量の調節を受けていることが推定された。一方、FoxP3のプロモーター解析ではアスベスト長期曝露細胞においてレポーター分子の発現量が有意に低下しており、アスベスト長期曝露によるFoxP3の発現低下には上流転写因子が関与することが示された。26基-16:珪肺症患者由来血漿における自己抗体および液性因子の解析研究代表者:李 順姫(衛生学) 塵肺である珪肺症では、慢性的な呼吸不全のみならず、強皮症などの自己免疫疾患を高頻度で合併することが知られている。我々は珪肺症における自己免疫疾患発症の機序を明らかにする目的で、健常人および珪肺症例における各種免疫応答因子の発現を解析してきた。その結果、珪肺症由来末梢血単核球(PBMC)でFasLのdecoy receptorであるDcR3のmRNA発現が増加していることを報告した(Otsuki et al,2000)。最近我々は血漿中DcR3も珪肺症例において増加することも確認した。DcR3は自己免疫疾患患者で増加することが知られており、Fas/FasLシグナルを阻害し、免疫細胞のアポトーシス失調の誘導することで、自己免疫疾患発症をもたらすと考えられている。 本研究では血漿中DcR3の増加と自己免疫疾患発症との関連を検討するため、自己免疫疾患未発症の珪肺症例における血漿中各種自己抗体を測定した。その結果、珪肺症例では、自己免疫疾患指標因子である抗セントロメア抗体、抗CCP抗体、抗dsDNA抗体および抗SS-A抗体が健常人に比べ有意に高い値を示した。しかしながら、自己免疫疾患関連因子とDcR3の血漿中濃度の相関は見られなかった。珪肺症例におけるDcR3の血漿中での増加は、特定の自己免疫疾患への方向づけではなく、慢性的な免疫動態の活性化を示す指標であることを示唆すると考えられる。S69

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