医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-35:骨髄異形成症候群におけるDNAメチル化阻害薬の作用機序の解明-細胞株を用いた検討研究代表者:辻岡 貴之(検査診断学(病態解析))目的:DNAメチル化阻害薬は骨髄異形成症候群(MDS)の治療薬として, 近年注目されているが, 作用機序に不明な点が多いためin vitroの系を用いて検討した。材料と方法:MDS細胞株MDS-L, MDS92と白血病細胞株HL-60を37℃, CO2 5%の条件下で培養した。DNAメチル化阻害薬(decitabine;DAC, azacitidine: AZA)を1nM-10 microMで連日処理した。結果:3つの細胞株に対して増殖抑制がみられ(DAC:IC50はMDS-L: 16.0±0.49nM,MDS92: 74.3 ±12.6nM, HL-60: 145.0 ±6.1nM), アポトーシスによる細胞死が確認された。細胞周期の解析では, MDS-LをDACで処理したとき, 濃度依存性にG2/M期の細胞が増加した。DNAマイクロアレイと全ゲノムを対象とした網羅的メチル化解析を行いDACの作用機序に関わると予想される13個の遺伝子を抽出し特に,cholesterol 25-hydroxylase(CH25H)に注目した。定量PCRを用いてCH25Hの発現量を確認したところ, 3つの細胞株でDAC処理により発現の上昇を認めた。考察: 今後, CH25Hプロモーター領域のメチル化解析を行っていきたい。MDS・白血病患者骨髄検体を用いて細胞株の結果を検証していきたい。26基-89:BST-1/CD157の幹細胞制御機構の解析研究代表者:石原 克彦(免疫学) 細胞膜外酵素BST-1/CD157を欠損するマウスの血液系・間葉系幹細胞を解析した。[結果]1.BST-1/CD157KOにおける血液幹細胞と間葉系幹細胞の解析: CD157KOの骨髄細胞数は、10週齢頃では野生型対照C57BL/6Jと差はなく、フローサイトメーター解析でも、骨髄細胞中の赤芽球系、ミエロイド系、Bリンパ球系の細胞頻度に有意の差は認めなかった。しかし、EPO、IL-3、IL-6、SCFを含有するメチルセルロースを用いた血液幹細胞アッセイを行ったところ、CD157KOの骨髄細胞ではミエロイド系コロニー(CFU-GM/G/M)数が2~3割、減少していた。骨髄細胞中の血液幹細胞(Lin-Sca-1+c-Kit+)の頻度は、CD157KOと野生型で一定の差異を認めなかった。骨髄血液幹細胞(Lin-Sca-1+c-Kit+)の表面にはCD157は発現されていなかったが、CD38が発現されていた。一方、間葉系幹細胞アッセイでは、CD157KOで骨芽細胞の減少傾向を示した。2. 間葉系細胞株の樹立:脾臓間葉系細胞の長期培養を試みたが、CD38/CD157DKO由来の間葉系細胞の培養は継続できなかった。[結語] CD157は骨髄の血液系あるいは間葉系の幹細胞からミエロイド系細胞あるいは骨芽細胞への分化制御に関与する可能性が示唆された。しかし、CD157を欠損してもその機能は代償されている。S66川 崎 医 学 会 誌

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