医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-52:赤血球膜蛋白異常症における溶血性貧血に関与する因子の解明研究代表者:末盛 晋一郎(検査診断学(病態解析)) 赤血球膜蛋白異常症は赤血球膜蛋白異常を病因とする疾患群である。赤血球膜蛋白は赤血球形態や変形能の維持に寄与しており、膜蛋白に異常が生じると膜構造が破綻し、赤血球形態変化をきたす。形態変化をきたした赤血球は変形能が低下することにより脾臓で滞留するために、通常の寿命よりも早期にマクロファージに貪食される。その結果、赤血球破壊が亢進することになり、骨髄での赤血球造血量よりも破壊量が上回った場合には貧血を呈する (溶血性貧血)。これまでの解析の結果、共通の膜蛋白異常を有する赤血球膜蛋白異常症症例間において溶血性貧血の程度に差があることが判明している。この現象から、膜蛋白異常の相違以外に溶血性貧血の程度を左右する機序が存在することが考えられるが、その機序については未だ未解明である。そこで本研究では「脾臓でのマクロファージによる赤血球貪食」の観点において、「マクロファージによる赤血球貪食の際に影響を与えることが予想される因子」として貪食の際に標的の一つになると考えられるCD47に着目し、赤血球における発現量をflow cytometryを用いて解析した。今回、赤血球膜蛋白異常症の赤血球CD47発現量を測定し、溶血性貧血の程度、膜蛋白異常との関連を評価したので、これまでに得られた結果を報告する。26基-37: 骨髄異形成症候群から急性白血病へ移行する分子機構の探索 ~患者骨髄細胞から細胞株に至る一連のゲノム解析研究代表者:通山 薫(検査診断学(病態解析)) 骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes;MDS)は、難治性の血球減少に加えて急性骨髄性白血病に移行しやすい予後不良の造血障害であるが、発症と病型移行の分子機構には未解明の点が多い。研究代表者は以前にMDS患者骨髄由来の培養細胞株(MDS92およびMDS-L)を樹立したが、最近さらに急性白血病への流れをインビトロで再現したと考えられる複数の亜株を樹立した。本研究は一連の細胞株樹立の元となったMDS患者の骨髄保存検体の全エクソン解析(当該患者の入院先であった福井大学医学部の倫理審査委員会にて承認済み)およびこれらの細胞株の全エクソン解析とそれらの相互比較によって、病型進展に関わる遺伝子変異を探索するものであり、MDSの病型移行・病態悪化の分子機構の一端を解明すること、そしてそれを防止する新しい治療戦略への道を開くことを目的とするものである。 一連の解析の結果、CEBPA変異、N-RAS変異は培養途上で出現し、各細胞株に受け継がれていることがわかった。またMDS92からMDS-Lへ移行する段階でHistone1H3C 変異(K27M)、SMARCC1 変異(D111Y)が検出された。これらはMDSから急性白血病へ進展する際のdriver変異の可能性があるとして現在注目している。S65

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