医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-25:寄生性病原体が宿主細胞の生死を制御するメカニズムを探る研究代表者:簗取 いずみ(分子生物学2) 偏性細胞内寄生性細菌である肺炎クラミジアは、増殖の場を維持させるため、宿主細胞の細胞死を抑制する必要がある。また、感染後期には、隣接する細胞へと感染を拡大させるために、細胞死を引き起こすことが考えられる。これまでの研究により、酵母に増殖抑制を示す肺炎クラミジア分子を62種類同定した。これらの分子の中で、特に増殖抑制作用が強く、ヒト細胞に発現させると、ミトコンドリアに局在する分子E01に注目し、検討を行った。E01-GFP発現酵母では、ミトコンドリア様ロッド構造に局在を示す。そこで、酵母に増殖抑制を引き起こす原因を探るためにTUNELアッセイを行ったところ、TUNEL陽性を確認した。また、ヒト細胞にE01を発現させると、核の断片化や細胞の縮小が観察され、約15%の細胞でTUNEL陽性細胞を認めた。すなわち、E01発現細胞ではアポトーシスが誘導されていることが予測された。さらに、E01は感染後宿主細胞内へと注入されるエフェクター分子であることも新たに証明することができた。今後、クラミジア感染細胞にてどのような機能を持つか、解析を進めて行く。26ス-3:宿主細胞内輸送システム障害を引き起こす肺炎クラミジアエフェクター分子の解明研究代表者:安井 ゆみこ(分子生物学2) 肺炎クラミジア感染症は上気道・下気道の炎症を起こす疾患である。偏性細胞内寄生性細菌である肺炎クラミジアは、III型分泌装置により、宿主細胞にエフェクター分子を注入することで、宿主細胞の生体防御機構から逃れて感染を持続している。その機構の1つとして、肺炎クラミジアが宿主細胞内小胞輸送システムを攪乱し、ファゴソーム・リソソーム融合による異物分解機構から逃れていることが推測される。インベルターゼ・カルボキシペプチターゼY融合タンパク質(Inv-CpY)発現酵母を用い、酵母内で輸送異常を引き起こす肺炎クラミジア分の探索を行った。その結果、15個の分子に細胞内輸送異常を引き起こす可能性が明らかになった。さらに、その中でMS02分子に注目し、この分子と相互作用する宿主由来の分子をYeast-two-hybrid法にて探索した。その結果、HIP14と結合することを明らかにした。さらに、GST pull down法および、共免疫沈降法を用いてMS02とHIP14間の結合を解析したところ、これらの実験においても証明することができた。MS02は感染中期にのみ特異的に発現しており、菌体の増殖期間に重要な役割を担っていることが予測される。S61

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