医学会誌 第41巻 補遺号
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26挑-1: 発熱性好中球減少症および感染により発症した全身性炎症反応症候群における原因微生物のPCR法を用いた迅速検出と至適治療法に関する研究研究代表者:尾内 一信(小児科学)【背景】発熱性好中球減少症では血液培養を施行し、経験的抗菌療法を行う。しかし血液培養は起因菌の同定までに時間がかかり、かつ検出率の低さが問題である。我々は血液検体から細菌、真菌、ウイルスを短時間に検出できるreal-time PCR法を用いた微生物検査システムを考案した。血液培養とReal-time PCR法で原因微生物の検出率、速度に差がないか比較検討した。【対象】2012年6月から2014年4月までに川崎医科大学附属病院小児科、血液内科、呼吸器内科で発症した発熱性好中球減少症97例(小児82例、成人15例)。【方法】細菌の検出に16SrRNAを、真菌の検出に18SrRNAを標的としてprimerを作成した。ウイルスにはLAMP法を用いてCMV・VZV・HSV-1,2・EBV・HHV-6,7・BKV・Parvovirus B19を検索し、陽性例に関してreal-time PCR法を行った。【結果】疾患の内訳は、ALLが9名、AMLが3名、NHLが6名、肺癌が4名、以下1名でNK/T cell Lymphoma、肝芽腫であった。 血液細菌培養陽性は97例中10例(10.3%)に対し、real-time PCR陽性97例中20例(20.6%)であった。6例で血液培養とreal-time PCR法の検出菌が一致した。真菌は血液培養、real-time PCR法ともに検出されなかった。ウイルスは97例中16例(16.5%)に検出され、HHV-6 6例,BKV 5例,Parvovirus 4例,EBV 2例,CMV 1例であった。起因菌同定までに要した時間は、血液培養33時間59分に対し、real-time PCR法は8時間であった。【結語】real-time PCR法は血液培養と比較して高い検出率を示し、かつ短時間に起因菌を同定できた。real-time PCR法を用い迅速に起因菌を特定し、至適抗菌薬を選択することが可能になると考えられた。26基-86:未治療肺Mycobacterium avium complex(MAC)症に対する免疫栄養療法の検討研究代表者:毛利 圭二(呼吸器内科学)【背景】非結核性抗酸菌症(NTM症)は慢性の経過で進行し有効な治療法が少ない難治性疾患である。予後因子として慢性炎症に伴う低栄養状態と貧血が重要であるが、NTM患者における栄養状態や栄養ケアについての詳細な報告は少ない。【対象と方法】本研究では、n-3系多価不飽和脂肪酸を多く含有する濃厚流動食「プロシュア®」を摂取し、NTM患者の栄養状態の改善と抗炎症効果の有効性を検討した。川崎医科大学附属病院に通院し本研究への同意が得られたNTM症患者10名を対象にプロシュア(240 ml/1パック)を1日2パック連日摂取し、介入前、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後に栄養状態を評価した。【結果と考察】本試験に参加10名のうち3名が離脱し7名が完遂した。介入中でプロシュア摂取に伴うGrade2以上の血液毒性及び非血液毒性は認めなかった。本試験を完遂した7名は、摂取エネルギー量、摂取炭水化物量、摂取たんぱく質量、摂取脂質量が増加した。介入後3ヶ月後の血中EPAとDHA、体重、BMIが増加し、血中プレアルブミン、トランスフェリンが改善傾向を示した。胸部X線では陰影が改善された症例もあり、n-3系脂肪酸の抗炎症効果もしくは免疫増強効果が示唆されたことから、NTM症患者に対する積極的な栄養療法が治療の一助になる可能性がある。S60川 崎 医 学 会 誌

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