医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-61: 単一個体が時系列クローンである条虫(サナダムシ)のモデル動物化-クローン株の大量維持と免疫疾患モデル動物としての適性検討-研究代表者:沖野 哲也(微生物学) 条虫類は雌雄同体で、同一個体に頭節~老熟節と年齢の異なる片節が、あたかも映画フィルムのように時間軸に沿って時系列で並んでいる。つまり、虫体の後方にいくにつれ少しずつ加齢が進んでいるので、多細胞動物の分化・加齢・エネルギー代謝のモデル動物としてユニークな材料である。本研究は、マンソン裂頭条虫(Spirometra erinaceieuropaei)のライフサイクルを実験室内で完成させ、1匹の成虫を起源とする3倍体クローンの幼虫を多量に維持し、遺伝的に均一な条虫株を樹立することを目的としている。クローン株の大量維持に向けて、第1中間宿主のケンミジンコの飼育に関しては確立できている。しかし、ケンミジンコと孵化幼虫(コラシジウム)との接触に関しては感染数のコントロールが不十分だった。そこで、ケンミジンコに二酸化炭素で麻酔を施し、個別に小シャーレに分け、1匹のケンミジンコに対する孵化幼虫の感染数をコントロールすることで、効率よく感染幼虫が得られるようになってきた。また、感染幼虫による宿主への影響を調べるため、今後、Kim HRら(2012)を参考に、マウスに感染後1週間ごとに採血し、8週目以降、それぞれのマウスの脾臓を摘出し、調節性T細胞の出現頻度も検討する予定である。26基-7:次亜塩素酸ナトリウムの抗菌作用メカニズムに関する検討研究代表者:山田 作夫(微生物学) 次亜塩素酸ナトリウム(Na)は消毒薬として頻用されているが、抗菌作用メカニズムの詳細は未だ不明なため、本研究ではその作用メカニズムについて超微形態的さらには生化学的に追求した。 次亜塩素酸Naの0.1%で5分あるいは15分処理した黄色ブドウ球菌209P株を透過型電子顕微鏡にて観察したところ、細胞質内に凝縮という特徴ある超微形態変化が認められ、次亜塩素酸Naが黄色ブドウ球菌染色体DNAへ影響を及ぼすことが考えられた。そこで、次亜塩素酸Na処理菌における染色体DNAをアガロースゲル電気泳動法により検出したところ、処理濃度が高濃度になるに伴って高分子DNAが消失し、次亜塩素酸Naは黄色ブドウ球菌の染色体DNAを分解することが強く示唆された。一方、次亜塩素酸Na処理時にEDTAを添加すると、処理後の残存生菌数の減少が抑制され、EDTAにより次亜塩素酸Naの抗黄色ブドウ球菌効果が抑制されることが判明した。それとともに、次亜塩素酸Na処理時に生じる核の異常が消失することがヘキスト染色により認められ、さらに、アガロースゲル電気泳動法において染色体DNAが検出できるようになり、次亜塩素酸Naによる染色体DNA分解作用は、EDTAにより抑制されることが示唆された。そのため、次亜塩素酸Naによる黄色ブドウ球菌染色体DNA分解作用は、その一因としてDNaseの亢進を介することにより惹起されることが考えられた。― 環境と生体反応 ―S58川 崎 医 学 会 誌

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