医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-2:甲状腺癌発生・進展に関与する因子の検討研究代表者:田中 克浩(乳腺甲状腺外科学) RETはレセプター型のチロシンキナーゼであり,髄様癌では多く変異がみられることで有名であるが甲状腺乳頭癌にはほとんど発現していない。ところが染色体再配列により,RET のキナーゼドメインをコードするC 末端側と,他のパートナー遺伝子のN 末端側が結合してキメラ遺伝子を作ると,キメラタンパクであるRET/PTC が作り出される。RET/PTC は,容易に二量体を形成,自己リン酸化によって恒常的に活性化した状態となる。RET/PTC は,パートナー遺伝子の違いで15 種類以上報告されているが,RET/PTC1 とRET/PTC3 で全体の90%を占める。当科で手術治療を受けた30例の甲状腺癌原発巣のRET/PTC1の発現をまず検討する。 現在RNA抽出,精製が終了し,real-time PCRのprimerも完成し発現検討直前までこぎつけた。6月末までには結果を得ている予定である。26基-78:子宮頸癌における癌微小環境細胞と癌細胞の相互作用解析-新規治療を目指して研究代表者:村田 卓也(産婦人科学1) 癌微小環境細胞として最も多く癌細胞周囲に存在する線維芽細胞について癌細胞の増殖に与える影響の解析を進めている。これまで、子宮頸癌において、癌関連線維芽細胞(CAF)が癌細胞の増殖を促進することを明らかにした。今回、卵巣癌においても、CAF様の細胞が卵巣癌細胞の増殖を促進することが明らかとなった。1)卵巣明細胞癌の手術検体から線維芽細胞様の間質細胞(OCSC)を初代培養した。コラーゲンゲル内で3次元培養した卵巣明細胞腺癌培養細胞SKOV-3に対する、OCSCの作用を検討した。OCSCの培養上清を添加した結果、コラーゲンゲル内でのSKOV-3の増殖が有意に促進された。現在、この促進因子を解析中である。2)子宮頸癌において癌細胞と子宮頸癌細胞周囲に存在する癌関連線維芽細胞(CAF) の間でHB-EGFとPDGF-βが相互作用し、子宮頸癌細胞の増殖が促進される。HB-EGFとPDGF-Bのシグナル伝達経路の両方を阻害する(dual inhibition)ことで、子宮頸癌細胞の増殖を効率よく抑制できるかどうかを検討した。しかし、阻害効果は認めなかった。そのため、子宮頸癌細胞の増殖を促進するCAF由来の因子を、網羅的遺伝子発現解析の手法を用いて現在解析中である。S56川 崎 医 学 会 誌

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