医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-83: 大腸癌肺転移患者における血中循環癌細胞検出率とバイオマーカーとして臨床的意義の可能性に関する探索的研究研究代表者:最相 晋輔(呼吸器外科学) 大腸癌肺転移は外科的切除の良い適応疾患であり、1995-2006年の大腸癌肺転移切除報告では術後10~15年の生存率は20~25%で生存曲線はプラトーに達することから切除により治癒可能なsubgroupの存在が示唆される。血中循環腫瘍細胞(circulating tumor cells; CTC)は微小転移のsurrogate markerとして期待されており、大腸癌においてもCTC陽性が予後因子であるとの報告が散見される。今研究は、大腸癌肺転移で切除により治癒が期待されるpre-systemicな状態にある症例や術後補助化学療法の適応症例等を、CTCを用いて予測可能か否かを検討することを目的とした。 平成23年度プロジェクト研究において、大腸癌単発性肺転移 5症例のCTC陽性率を検討したが、5例全例陰性で、予後解析等は不可能であった。これを単発性肺転移という予後良好で肺転移切除により根治可能な症例に限定したことが主たる原因と推測、また近年では多発性肺転移であっても積極的に切除する傾向にあり、当科での平成24~25年度の大腸癌肺転移切除13例中4例が多発性肺転移症例であった。こうした背景から、平成23年度研究内容を修正してより予後不良で再発リスクの高い大腸癌多発性肺転移におけるCTC研究を計画したが、平成26年度の大腸癌肺転移切除は単発性2例のみで対象症例はなかった。近年の転移性大腸癌治療の多様化から症例集積が困難であることと、前研究結果も踏まえて、当研究を継続することは困難かつ臨床的意義に乏しいと判断し、研究中止としたい。26基-90:本邦におけるサルコぺニア肥満と大腸腫瘍の関連性に関する臨床研究研究代表者:松本 啓志(消化管内科学)【背景】大腸癌は増加傾向にあるが、その促進因子として内臓脂肪型肥満、逆のその抑制因子として身体活動が挙げられている。一方で、大腸CT検査(CTコロノグラフィー)は大腸腫瘍の診断のみならず、腸管外病変の検出や内臓脂肪面積・体幹筋肉面積の測定も可能である。【目的】大腸CT検査による大腸腫瘍の診断を行うとともに、体幹脂肪面積、筋肉測定ならびに脂肪・筋肉関連サイトカン測定を行い、大腸腫瘍との関連について検討を行った。【方法】当院において大腸CT検査と内視鏡検査を同日に行った40歳以上の139名(平均年齢 64.7±11.0歳、男性62例、女性53例)を対象とした。大腸内視鏡診断をもとに、無病変群44名、腺腫ポリープ群38名、進行腺腫(粘膜内癌を含む)群25名、進行癌31名の4群に分類した。腹部断層画像を用いて、大腸解析を行うとともに大腸腹囲、内臓脂肪面積、体幹筋肉面積も測定した。また、血清アディポネクチン、レプチン、TNF-α、IL-6を測定した。【成績】無病変群と比較して、腺腫ポリープ群、進行腺腫群、進行癌群の内臓脂肪指数(76.4±28.2、96.4±34.4、92.4±51.5、93.7±30.0、p<0.05)および体幹筋肉指数(52.5±16.4、67.7±17.4、60.6±20.6、59.6±14.3、p<0.05)は有意に高値であった。また、無病変群と比較して、腺腫ポリープ群、進行腺腫群、進行癌群の血清TNFα(30.8±29.4、19.7±18.3、22.8±25.2、5.9±8.5pg/ml、 p<0.05)およびIL-6(80.6±129.5、58.6±74.0、63.9±125.3、8.1±23.7pg/ml、p<0.05)が優位に低下していた。【結論】大腸CT検査は大腸腫瘍の診断のみならず、そのリスクである内臓脂肪型肥満の評価も同時に行うことができる。S53

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