医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-32:Wntシグナル抑制による肺扁平上皮癌の治療研究代表者:瀧川 奈義夫(総合内科学4) 分泌タンパクであるWnt ファミリーは、細胞の増殖、分化、生存およびアポトーシスなどを調節し、発癌、癌の浸潤あるいは転移において重要な役割を担っている。Wntファミリーの中で、Wnt5a はその受容体であるRor2受容体チロシンキナーゼに結合し、β-カテニン非依存的なWntシグナル経路を活性化する。このシグナル系が悪性腫瘍の進展に関わることが明らかとなり、治療標的になることが示唆されている。本研究では複数の肺扁平上皮癌細胞株を使用し、Wnt5a/Rorシグナルと上皮間葉系移行(Epithelial-mesenchymal transformation: EMT)の関係を明らかし、Wnt5a/Rorシグナルの阻害による抗腫瘍効果を検討している。EMTにおいては代表的上皮マーカーとしてカドヘリンを、間葉系マーカーとしてビメンチンの蛋白発現をWestern blotにより解析した。Ror1/Ror2/Wnt5a/カドヘリン/ビメンチンの発現は、EBC-1では2+/+/-/2+/-、EBC-2では+/2+/+/2+/-、LK2では+/2+/2+/2+/-であった。Wnt5aを発現しているEBC-2とLK2では、Wnt5aのsiRNAにより、有意な細胞増殖抑制が認められた。Wnt5aの阻害によるEMTとRorシグナル伝達について、現在検討中である。26基-77:バレット食道におけるバレット腺癌(EAC)リスクマーカーの検討研究代表者:塩谷 昭子(消化管内科学)【目的】バレット上皮の腸型形質発現の検出および特殊腸上皮化生の診断にNarrow Band Imaging(NBI)拡大観察下ブラッシング法は、生検と比較して非侵襲的でより有用であることを報告した (Murao et al. J Gastroenterol 2012;47:1108)。今回、バレット腺癌リスクマーカーとなる遺伝子を同定する目的で、バレット上皮のNBI拡大観察下ブラッシング法により得られた検体を用い、網羅的遺伝子解析により同定した遺伝子発現量をバレット腺癌群と対照群で比較検討した。【方法】1cm長以上のバレット上皮のNBI拡大観察により微細粘膜模様をsmall round, long oval, tubular/villousに分類した。バレット腺癌例の癌部および周囲のバレット上皮部さらに対照群のバレット上皮部(tubular/villousパターンを優先的に採取)より生検およびブラッシングにより検体を採取した。バレット腺癌5例および対照5例の癌部、バレット上皮部、計15生検サンプルから抽出したRNAをマイクロアレイ(Affymetrix GeneChip®)にて網羅的に解析し、有意差が認められた遺伝子について比較検討した。【成績】対象はバレット腺癌8例とバレット上皮を有する対照52例。バレット腺癌群では対照群と比較して、生検サンプルではCD55、EGR3、ENC1、HAS3の発現量が有意に高かった。ブラッシングサンプルCD55 mRNA平均発現量は、癌部、癌群バレット上皮、対照群の順に有意に高発現であった(p=0.001)。【結論】tubular/villousパターン呈するバレット上皮のブラッシング法によるCD55の高発現は、バレット腺癌のリスクマーカーとなりうる可能性が示唆された。S50川 崎 医 学 会 誌

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