医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-63: 胸部悪性腫瘍におけるEGFR, HER2を介したNK細胞からの免疫逃避機構の解明とその克服研究代表者:沖田 理貴(呼吸器外科学)【背景】EGFR、HER2標的薬剤の開発が盛んだが、EGFR、HER2を介した免疫逃避機構については未解明な点が多い。【方法】Project 1: 非小細胞肺癌(NSCLC)細胞株を用い、EGFR-チロシンキナーゼ(TKI)によるEGFRシグナル不活化のNKG2Dリガンド(NKG2D-L)発現への影響をフローサイトメトリー(FCM)法で、NK細胞傷害活性への影響をLDH放出試験で解析した。Project 2: 悪性胸膜中皮腫(MPM)細胞株を用い、HER2-TKIによるHER2発現量への影響をFCM法で、抗HER2抗体薬による抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)への影響をLDH放出試験で解析した。【結果】Project 1: NSCLC細胞株PC-9において、EGFR-TKI治療でNKG2D-L発現が減少し、NK細胞傷害活性が減弱した。各種シグナル阻害剤を用いた検討から、NKG2D-L発現制御へのPI3K-AKT経路の関与が示唆された。Project 2: MPM細胞株において、HER2-TKI治療はHER2発現が増加させ、抗HER2抗体薬によるADCC活性をも増強させた。【結論】Project 1: PC-9細胞において、EGFR阻害はNKG2D-L発現低下によりNK細胞からの免疫逃避に関与する。Project 2: MPM細胞株において、HER2-TKIと抗HER2抗体との併用はADCCを増強する。26基-91: lineage specific oncogeneを標的としたATF (artificial transcription factor)による非小細胞肺癌に対する抗腫瘍効果の検討研究代表者:深澤 拓也(総合外科学) MeyersonらのSox2が肺癌および食道癌におけるlineage specific oncogeneであるという報告に続き (Bass AJ, Meyerson M et al. Nat Genet. 41:1238-42. 2009)、新しい知見として、国内からもSox2が肺腺癌におけるstem-like cellsにおいて過剰発現されそのtumorigenicityに関与することが報告され(Nakatsugawa M et al. Lab Invest. 91: 1796-804. 2011)、これらの転写因子の標的遺伝子としての有用性が示された。今回、我々はSox2に対する発現抑制型人工転写因子:ZFR/Sox2を作製し、非小細胞肺癌に導入することでその抗腫瘍効果を検討した。当該転写因子を発現できるplasmid vector: pCMV ZFR/Sox2は複数の肺扁平上皮癌細胞において、Sox2転写活性を有意に抑制することがluciferase assay により示された。またCMV promoter下ZFR/Sox2を発現できるrecombinant adenoviral vector:Ad- ZFR/Sox2は肺扁平上皮癌細胞EBC2に対し、細胞増殖抑制およびcolony formationの抑制を誘導した。以上より、ZFR/Sox2を用いた肺扁平上皮癌に対する腫瘍制御の可能性が示唆された。S49

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